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発達支援における自治体取組データベース ~家庭と教育と福祉がつながる事例集~(つながる実践DB)

はじめに

発達障害をはじめ、特別な支援や配慮を必要とするこどもの支援には、家庭と教育と福祉の連携が不可欠です。本データベース(つながる実践DB)では、このようなこどもへの支援を「発達支援」と位置づけ、各自治体における発達支援の取組を、教育分野と福祉分野の担当部署の皆さまが活用しやすい形で整理・掲載したものです。 自治体の種類や地域、各自治体が回答した特徴的な取組内容をもとに、必要な情報にスムーズにアクセスできるよう構成しています。構築経緯などの詳細は、「発達支援における自治体取組データベース~家庭と教育と福祉がつながる事例集~の経緯等について」(PDF:260KB)をご覧ください。

明石市立発達支援センターの取組   /  質の高い児童通所支援提供体制の構築 

取組に関する情報

自治体名 兵庫県 明石市
取組の概要  明石市は、平成21年に発達障害に特化した公設の相談機関「明石市立発達支援センター」を設置した。同センターは、相談支援・就労支援・発達支援を三本柱とし、それぞれの機能を相互補完しながら、地域における支援の中核機関としての役割を担っている。また、放課後児童クラブに対しても定期的な支援を実施している。
 さらに、質の高い児童通所支援(障害児通所支援)の提供体制の構築を目指し、段階的な取組を進めている。第1段階では、調査員が事業所を巡回し、聴き取りを通じて支援内容を評価したうえで、その結果を事業所へフィードバックする。第2段階では、第1段階で得られた情報を基に、事業所の取組内容を詳細に示した「あかし療育図鑑」の作成を進めており、保護者が事業所をより適切に選択できるようにすることを目指している。
取組の関係部署 福祉局生活支援室 発達支援課 発達支援センター
福祉局生活支援室 障害福祉課
教育委員会事務局 学校教育課

自治体に関する情報

自治体ホームページ

https://www.city.akashi.lg.jp/

総人口と総人口に占めるこどもの比率

総人口 306,760人 総人口に占めるこども比率 18.44%
出典 総務省 住民基本台帳 R6.1.1現在
*本表における「こども」とは、総務省住民基本台帳に準じ0歳以上19歳以下の者を指します。

教育・福祉関連の地域資源情報

  小学校 中学校 高等学校 特別支援学校
公立 28校 13校 7校 1校
私立
出典 明石市教育委員会HP R7.10現在
特別支援学級・通級の設置状況

特別支援学級:小学校28校、中学校13校設置

通級による指導:19校設置

  児童発達支援センター 児童発達支援事業所 放課後等デイサービス  放課後児童クラブ
市内 2施設 49施設 96施設 28施設
出典 明石市HPよりR7.12.24現在
障害児通所支援受給者数 2,062名
出典 厚生労働省R6.3

明石市立発達支援センターの取組

発達支援センターの成り立ち

明石市立発達支援センターは、平成16年2月に開催された「発達障害児の問題を考える明石市民フォーラム」において、保護者から発達障害児者への支援策を求める声を受けて、平成21年に開設された。当時、市内には発達障害に対応できる相談・療育機関が少なく、市長が参加したフォーラムにおいて、保護者や関係団体からは「市として発達障害児への支援を充実させてほしい」との声が寄せられた。その後、発達障害に関するライフステージを通じた支援体制を構築するための検討会での議論を経て、「発達障害児者への継続した支援を行う機関が必要」という結論に至り、発達障害に特化した専門的支援機関として「発達支援センター」が設置された。

現在は、発達に関する困りごとがある場合、「まず発達支援センターに相談する」という流れが、教育や福祉の現場でも広く定着している。

概要及び取組

発達支援センター立ち上げ時には、年間相談件数を約500件と見積もり、職員体制6名でスタートしたが、現在では、年間相談件数が2000件を超える状況となったため、職員体制を充実させ、令和7年度の職員数は課長以下12名としている(うち相談員11名)。相談員は、心理士(臨床心理士又は公認心理師)、保健師、社会福祉士、精神保健福祉士、教員、保育士等の有資格者であり、令和7年度からは、作業療法士もスタッフに加わっている。センターにおいては、相談支援、就労支援、発達支援を3つの柱としており(図1参照)、その対象者は年齢や診断の有無を問わない。これら個別の相談支援のほか、保護者対象の事業として、ペアレントトレーニング、サポートノート講座、講演会、交流会、支援者対象の事業として、訪問支援、対面やオンラインによる研修会を実施している。

こどもの所属先への巡回支援については、庁内関係課が各々の分野で実施しているが、高校への訪問を行っているのは発達支援センターのみである (表1参照)。

以下、発達支援センターの取組のうち、高校生とその家族の相談、高校への支援及び放課後児童クラブへの支援を取り上げる。

高校生とその家族の相談、高校への支援:

高校生とその家族の相談は、発達支援センターの相談件数全体の1割弱である。多くは就学前・小学生から相談しているケースの継続だが、高校生になり新規で申し込まれる方は、生活面の課題(課題や予定の管理ができない、金銭管理ができず借金等をつくる、SNS上のトラブルなど)や、身体面・精神面の課題(起きられない、身体化症状、対人不安、強迫症状、自殺念慮、摂食障害など)、それらにまつわる親子関係の課題を抱えている場合が多く、かつ、未診断である場合が多い。こうした場合、その高校生や家族に、発達特性を理解していただくことは容易ではない。また、その高校生の所属先も、公立・私立、普通科・専門学科、全日制・定時制・通信制高校、フリースクールなど多様化しており、それぞれの学校の方針やこれまでの経験なども様々であることから、可能な対応範囲を見極めて助言等を行っていく必要があり、高校に特性への理解を促すことも容易ではない。教員は、支援を必要とする生徒を目にする機会が増えているが、その対応に苦慮していると聞く。特に進級・卒業が危ぶまれる生徒や、能力と見合わない進学希望・就職希望がある生徒等に対し、「話が通じにくい、指導しても行動が変わらないため、対応が難しい」という声や、「どこにつなげばいいかわからない」「福祉や医療に関する情報がわからない」という声も聞かれる。

発達支援センターでは、当事者・家族の同意を得て相談内容等の情報を学校に提供するとともに、学校に対して、対応方法に関する助言等を行っている。卒業まで継続することを選択する場合は、課題提出や出席日数の枠の調整、環境整備をともに検討したり、校内での本人面談をお願いしたりする。より自分に合った進路を検討する中で当事者が休学や退学を選択する場合には、その後の進路の選び直しを支援する。

また、発達支援センターは、直接又は高校を通して、当事者・保護者に対し医療機関の受診を提案するとともに特性理解に伴奏的に取り組む、就労支援制度等を紹介して適切な進路の選択に協力する、当事者・家族が大学進学を選択する場合には高校に対し合理的配慮の引継ぎを行うよう助言する、などの支援を行っており、それらが、高校教員の不安軽減にもつながっている。

こうした支援を行っていく中で、高校側から、発達支援や保護者支援等に関する教員研修を求められ、実施した実績もある。

図1. 明石市ホームページより

表1.明石市の巡回支援(事業名、所管及び体制、対象)の一覧

事業名 所管及び体制 対象
明石市立発達支援センター訪問相談 明石市立発達支援センターのスタッフ 認可外・認可保育施設、幼・小・中・高・放課後児童クラブ、サポート校、事業所等
特別支援教育巡回指導 教育委員会事務局学校教育課が約20名の専門職(心理士、言語聴覚士、教育関係者等)に委嘱 公立幼稚園、小・中学校、養護学校
発達巡回指導 こども育成室が8名の心理士等に個人委託 認可保育施設
巡回教育相談 市内幼児教育相談室の相談員 公立幼稚園、ことばは来所相談になるため除外する

(明石市から聴取した情報に基づき発達障害情報・支援センターにおいて作成)

放課後児童クラブ(放課後児童健全育成事業)への支援:

放課後児童クラブに対しては、発達に課題のあるこどもへの適切な対応のための公的支援が乏しかったことから、発達支援センター開設の翌年にあたる平成22年より、訪問支援事業(おひさま訪問)を開始した。

この事業の内容は、以下の通りである。

  1. ①観察と意見交換:支援員から対象児の普段の様子や困りごとを聞き取った後、対象児を中心に観察を行う。その後、発達に関する具体的な関わり方や保護者・学校との連携、環境上の工夫について意見交換する。

  2. ②ミニ研修会:放課後児童クラブで困難を抱えるこどもの事例をもとに、発達障害(グレーゾーンを含む)の理解と具体的な対応について研修を行う。内容は行動問題の見方、環境の配慮、保護者対応などであり、研修のテーマや時間等は柔軟に対応している。現在は、市内28か所ある放課後児童クラブの事務局(公益財団法人こども財団)との連絡会議を年2・3回実施し、各クラブの現状や市全体の課題を共有している。また一次的対応として事務局がクラブを訪問したうえで、必要があれば発達支援センター職員がより専門的な視点から訪問する流れとなっている。

明石市ではこどもの人口増加に伴い、放課後児童クラブの利用児数も大幅に増加している。放課後児童クラブは小学校に併設されており、夏休みのみ利用する児童も多いことから、環境上の課題(教室数の不足、支援員不足、夏季の屋外遊び場の不足など)と、支援員の質の向上が課題となっている。利用児の中には診断があるこどもも未診断のこどもも在籍しているが、特に、未診断のこどもの場合、保護者も含め、特性の理解を促すことなどに苦慮しているとの声や、学校側から発達に特性のあるこどもの情報がなかなか得られないという声が多い。発達支援センター職員の訪問時には、クラブ全体での環境調整の方法、対象児童への具体的な声かけや保護者との話し合いの方法などを伝えている(令和6年度の訪問実績:7か所、のべ12回)。支援員の感想としては、「自分の対応に自信がなかったが、その場で具体的に教えてもらえたので自信をもって関われるようになった」「すぐ効果が出ないものだが続けるしかないとわかり、覚悟が持てた」「発達障害について何となく理解したつもりでいたが、整理して理解することができた」といった声が聞かれる。専門的支援が乏しかった放課後児童クラブへの公的な支援は、地域での安心できるインクルーシブな居場所確保のためにも必要な事業であると考える。

質の高い「児童通所支援」提供体制の構築

第1段階 事業所を対象とした巡回評価

明石市は中核市として、障害児通所支援事業所の指定及び運営指導に関する権限を有している。これまでの運営指導では、事業運営や人員配置、設備の基準を満たしているか等の確認が中心であり、支援内容の把握や評価の機会は限られていたため、令和4年度に、支援の質の向上を目的とした新たな取組の検討を開始した。

令和3年10月には、国の「障害児通所支援の在り方に関する検討会報告書」が公表され、法制度や支援の質に関する課題が既に示されており、明石市においても、本報告書に沿って検討を進めたという経緯である。

兵庫県には第三者評価の仕組みがあるが、明石市内でこれを受審する事業所は少なく、評価体制の整備が十分とは言えない状況であったため、検討の結果、明石市独自で評価を行うこととした。具体的には、調査員が事業所を巡回し、聴き取りを通じて支援内容を評価し、その結果を事業所へフィードバックすることで、支援の質の改善を図ろうとするものである。なお、令和6年度、7年度については、国の「地域支援体制整備サポート事業」の枠組みを活用して実施した。

手続きと経過

令和4年度には、モデル的に6か所を選定して、事業所の支援状況について聴き取りを実施した。令和5年度には、第三者評価の内容を参考に、大学教授等の助言を得て、聴き取りの際の評価項目を作成した。評価実施前に事業の説明及び事業所に求められる基本的な支援に関する研修会を開催した上で、訪問可とした21の事業所に対して評価を実施した。

令和6年度には、新規開設事業所を除く残りの75事業所に対して、巡回の実施を連絡した後、委託事業者が直接連絡調整して訪問、聴き取りを実施した。令和7年度には、新規開設事業所に対する聴き取りを実施するとともに、事業所への結果通知(判定や改善すべき点の示し方、全体(平均)に占める位置など)を作成し、令和8年度に全事業所に対して一斉に発出することとしている。

なお、本事業を委託する事業者の選定に当たっては、介護認定調査員や障害認定調査員など、聴き取り調査の実務経験やノウハウを有することを要件とした。

評価項目

評価項目は以下の5つのカテゴリーに分類される。

  1. ①環境・体制整備

    インクルーシブな環境づくりの状況や具体的な取組内容を確認、専門職の配置状況・人数、職員研修の実施状況の把握。

  2. ②支援内容とプロセス

    プログラムの作成に関与する人員、実際の支援内容は巡回支援員訪問時の児童の様子の観察をすることで確認。さらに、アセスメントの実施状況(保護者・児童との面談の適切性)、サービス提供前後の打ち合わせや振り返りの有無を聞き取る。

  3. ③関係機関との連携

    相談支援専門員や児童発達支援センター等との連携状況、他事業所からの見学受け入れ、職員の外部研修参加やその実績について確認する。

  4. ④本人・保護者への説明責任と連携

    保護者への事務的説明の適切さ、保護者同士の連携支援の取組、苦情対応体制の整備状況を確認する。

  5. ➄緊急時対応と法令遵守

    基準に基づく緊急時対応マニュアル等の整備、避難訓練の実施状況、虐待防止への取組を聞き取る。

第2段階 「あかし療育図鑑」作成に向けて

評価項目については、すべて事前に事業者に提供、内容を共有した状態で調査に臨んでもらった。令和8年度に評価の結果を通知することとしており、改善が必要とされた点については、今後、事業所において改善を進める。改善を図った場合にはその報告を受けることとし、報告があった事業所に対しては、実地及び書類等によりその内容を再確認することとしている。これらの対応により、事業所全体の質の向上及びそれが可視化されることが期待される。その上で、保護者の事業所選択に資するよう、これらの結果を「あかし療育図鑑」としてまとめ、公表する予定であり、現在、掲載形式を検討している段階である。評価結果の通知後、事業所の改善が図られるまでには一定の期間が必要であるため、図鑑の完成は令和8年度~令和9年度を目途としている。

なお、「あかし療育図鑑」を保護者に周知するためのフライヤーについては、イラスト等を用いて分かりやすく示し、保護者向けの情報であることを前面に打ち出した構成とした。

また、評価を通じて得られた知見等をもとに、事業所からの要望も踏まえ、「あかしバージョンアップ療育」として、事業所に対する支援の充実のための研修を行っている。


参考となる自治体資料・HP(アクセス日:令和8年3月18日)


担当部局:福祉局 生活支援室 発達支援課  <TEL: 078‐918-5841> 
掲載日:令和8年3月31日