階層的支援体制を支える人材養成
階層的支援体制の構築
滋賀県の発達障害者支援体制は、市町・圏域(福祉圏域)・県の三層構造で重層的に展開し、特に、圏域における二次支援の充実を図っている点に特徴がある。県では昭和56年に全国で初めて「福祉圏構想」を策定し、県内を7つの圏域に分けて圏域単位での支援体制整備を進めてきた。この枠組みは発達障害者支援にも適用され、県の実情に即した体制となっている。その体制整備の起点となったのは、平成14年に開設された滋賀県発達障害者支援センターである。同センターは、発達障害者やその家族、関係機関からの相談を一手に担う県レベルの専門機関として設置され、乳幼児期から成人期まで幅広い支援を提供してきた。開設以降、相談件数は年々増加し、平成14年度から平成20年度の間に延べ相談件数は数倍に達した。相談内容も多様化したことから、県内1か所のセンターのみでは対応が困難な状況となった。
併行して、各市町は自発的に発達支援の取組を進めてきた。平成14年には湖南市(旧甲西町)が県内で初めて発達支援室を設置し、平成18年には大津市が発達支援事業を開始、平成24年には草津市が発達支援センターを設置するなど、各市町で相談機能を備えた拠点の整備が進められた。これにより、地域に密着した相談支援体制が形成され、市町・圏域・県が連携する階層的支援の基盤が整い始めた(米原市の取組例)。
支援の仕組みは、地域住民に近い市町の発達支援センター(又は発達支援室)が日常的かつ継続的な相談に対応する一次支援を担う。次に、圏域において関係機関のネットワークを活用した二次支援が行われる。そして三次支援として、滋賀県発達障害者支援センターが圏域支援機関に対し専門的な助言や研修などの支援を行う。
財政面では、一次支援機関への県補助金は設けられていないが、二次支援機関には県補助金が支給され、圏域自治体の負担金と組み合わせて運営されている。必要に応じて、各圏域が独自に追加補助を行う場合もある。
二次支援と人材養成の展開
1.二次支援の構築
県では、発達障害者支援における二次支援の充実を図るため、平成19年度に「発達障害者支援キーパーソン養成事業」を開始した。これは、圏域の障害者生活支援センターおよび就業・生活支援センターの職員を対象に、県発達障害者支援センターで実施する専門研修を通して、発達障害支援の基礎から実践までを体系的に習得させるものであった。研修修了者を圏域の核となる支援人材として位置づけ、地域における相談支援力の向上を図ることをこのキーパーソン養成事業の目的としていた。この事業を基盤として、平成21年度には「認証発達障害者ケアマネジメント支援事業」が創設された。各圏域では当該圏域における中心的な役割を果たしている法人が事業を受託し、1名の認証発達障害者支援ケアマネージャー(発達障害者地域支援マネジャーに相当)を配置している。滋賀県発達障害ケアマネジメント支援事業実施要綱では、発達障害者及び発達障害の疑いがある者のための①関係機関等の圏域ネットワークづくり、②施設・事業所等へのコンサルテーション、③専門性の高い相談支援の三つの業務を担うとしている。医療・保健・福祉・教育・労働などの関係機関との連携を推進し、地域における実効的な支援体制の構築を図っている。これにより、各圏域においては、二次支援が市町の一次支援を後方から支えるとともに県が設置する発達障害者支援センターが三次支援として専門的支援・助言を行うという、階層的な支援体制が確立された。
2.人材養成と認証制度
県では、二次支援を担う人材の専門性を高めるため、「県発達障害者支援ケアマネージャー養成研修」を実施している。研修はベーシックコースとアドバンスコースの二段階制で、アドバンス修了者には知事が認証書を交付し、発達障害者支援ケアマネージャーとして活動することができる。認証の有効期間は5年間であり、フォローアップ研修の受講により1年単位で更新される。令和7年度滋賀県発達障害者支援ケアマネージャー養成研修<ベーシックコース>は全12日程23コマである(参照:関係機関の方へ | 滋賀県発達障害者支援センター)。また、県では年1回、各市町の発達支援室や発達支援センター担当者を集めて「情報交換会」を開催し、各地域の好事例を共有することで支援の質向上を図っている。
図1.滋賀県における発達障害に関する支援機関等(滋賀県ホームページより)
図2.支援体制と人材育成(※滋賀県から聴取した情報に基づき発達障害情報・支援センターにおいて作成)
児童生徒の健全育成に係る県と市町の連携協定
連携協定に至る背景
近年、ひきこもり状態にある児童生徒への対応が課題となっており、不登校児の中にはひきこもりに至るケースや、その背景に発達障害があるケースも見られている。このため、ひきこもり防止策として、また発達支援の観点から切れ目のない支援を実現するために、学校関係者、地域の支援機関や福祉部局の担当者との情報共有や連携した支援体制の構築が求められていた。そこで県では、滋賀県立精神保健福祉センターが令和元年に、県内でひきこもりに関する相談支援を行う機関・団体を対象に実態調査を実施し、その結果を「令和2年度滋賀県ひきこもり支援に関する実態調査」として公表した。この調査により、若年層のひきこもりが地域的にも学校現場においても深刻な課題であることが明らかとなり、教育と福祉の連携による早期介入の必要性が確認された。こうした結果を踏まえ、児童生徒の健全育成を目的として、県と市町が連携を強化し、ひきこもりになる前の段階から支援を行う体制を構築することとなった。特に、県立高等学校に進学した特別な支援を必要とする児童生徒が、学齢期から就労期に至るまで途切れることのない支援を受けられるようにするため、教育と福祉の枠を超えた情報共有と連携支援の仕組みづくりが進められた。
連携協定に基づく取組
この方針に基づき、令和3年4月には県が県内14自治体と協定を締結し、令和5年度には県内すべての市町との協定締結が完了した。支援対象は、不登校又は不登校傾向にある児童生徒(1か月に5~7日以上の欠席、別室登校・放課後登校がある場合)、発達障害の有無にかかわらず学校生活や社会生活において特別な支援を必要とする者、不登校や問題行動等により中途退学や転学のおそれがある者、又は関係機関による連携支援が必要と認められる者であり、教育・福祉両分野の関係機関が情報共有を行いながら継続的な支援を提供する仕組みである。市町では従来、早期発見・早期支援の取組をはじめ、市町立学校(小学校・中学校)と地域支援機関の連携の下で発達支援を進めてきたが、県立学校(高等学校・特別支援学校)との連携には地域差があり、情報共有の仕組みづくりが課題とされていた。今回の協定により、県と市町、教育委員会が一体となった体制が整備され、支援情報の共有が制度的に担保されたことで、特別支援教育コーディネーターや中学校・高校の担当教員が異動しても連携が継続できる仕組みが確立された。目的や内容は、入学許可予定者オリエンテーション、入学式、保護者会、PTA総会などで保護者に説明されている。中には校長名による文書配布などを通じて周知を図る高校もみられる。なお、これらの取組は、令和3年6月29日に開催された「ひきこもり支援に関する関係府省横断会議」でも取り上げられ、同年10月1日付で関係省庁から発出された「ひきこもり支援における関係機関の連携の促進について(依頼)」において先進事例として紹介された。
情報交換会における実践事例
市町の発達支援室や発達支援センターの「情報交換会」が年に1回開催されている。そこでは以下のような実践事例が報告された。
本人は高校に進学したものの学業遂行に困難を抱え不登校状態になっていた。留年のうちに退学届けを提出。家庭には経済的な問題があり、保護者も精神疾患を抱えるなど複数の課題が重なっていた。これに対し、高校及び関係機関を含めたケース会議を適宜開催し、各機関がそれぞれの役割を担いながら連携して支援を行った。具体的には、本人の発達特性の精査、重層的支援体制整備事業のアウトリーチ支援を活用した保護者との面談、就労支援相談員を加えての中退後の進路についての話し合いが行われた。
県では、このような実践事例を各市町が共有できる「情報交換会」を定期的に開催することにより、県と市町の協定に基づく情報共有と連携支援の仕組みが県内のすべての市町において展開されるよう促している。
参考となる自治体資料・HP(アクセス日:令和7年12月16日)
担当窓口:健康医療福祉部 障害福祉課 精神保健福祉係 <TEL.:077-528-3548>
掲載日:令和8年3月31日