県地域障害児支援体制整備協議会の設立
法改正を契機とした県全体協議会の経緯
令和4年の児童福祉法改正により、児童発達支援センターが「地域の中核的役割」を担うことが法律上明確化された。佐賀県ではこの改正法の施行時点(令和6年4月)で、既に5つの保健福祉圏域すべてに児童発達支援センターが1か所以上設置されており、これらが中核として機能するために県全体の方向性を検討する必要があった。これまでは、療育支援センターが、実務上の技術的な研修や各児童発達支援センターの協議の場を運営していたが、法改正後は県全域にわたる障害児支援体制の整理・構築が求められるようになったため、県では「県地域障害児支援体制整備協議会」を発足。県としての方針提示、圏域への助言、体制づくりの全体統括を担うこととなった。
令和6年度はキックオフ・第1回協議会を開催し、県・圏域・市町が抱える課題を共有。令和7年度は7月に第2回会議を実施し、令和8年2月に第3回を実施しており、令和7年度から本格稼働している。構成員は県障害福祉課(設置者、事務局)、発達障害者支援センター(2ゕ所)、児童発達支援センター(9ゕ所)、各市町障害福祉担当課及び母子保健担当課の職員であり、外部の専門的視点を取り入れるため大学とアドバイザー委託契約を締結している。大学と県との契約内容は、①地域障害児支援体制整備協議会への参加、②同協議会における研修講師の派遣、③地域の支援体制整備及び関係機関等との連携に関する助言・指導等の三点である。
三つ目の助言・指導等の一環として、ロードマップ(後述)の作成に当たっての助言や、各圏域での体制整備に係る専門的見地からの助言を得ている。県では、各圏域を回って意見交換会を実施しており、その場を活用しての助言である。
ロードマップ
県地域障害児支援体制整備協議会では、県障害福祉課とアドバイザーとして協議会に参画している大学とが共同で作成した「令和10年度までの4年間のロードマップ」が示されている。ロードマップは「現状把握・分析 → 連携体制構築 → 自走可能な障害児支援体制の確立」という段階を掲げ、令和7~10年度にかけて、各圏域が地域の実情に応じた支援体制を形成していくことを目標としている。 ここでいう「現状把握・分析」は、単なる支援ニーズやサービス量の把握ではなく、圏域固有の課題(例えば、事業所不足や横の連携の不十分さ)、県全体に共通する課題(例えば、発達障害診断可能な医療機関不足など)を幅広く収集・分類・整理する段階を指す。現在、この整理作業が進行中である。今後、各圏域において、持続可能かつ自走可能な障害児支援体制を構築し、障害児やその家族が必要な支援を確実に見つけられる環境を整えることを目指す。
佐賀県児童発達支援センター機能強化事業と教育と福祉の連携
児童発達支援センター機能強化事業の再構築の背景と意図
1.発達障害支援を取り巻く環境の変化と事業見直しの必要性
佐賀県では、平成15~16年頃から発達障害に関する事業に継続的に取り組んできた。近年、発達障害のいわゆるグレーゾーンに該当する児者が全国的に増加していると言われており、佐賀県においても自閉症支援に重点を置いてきた一方で、自閉症以外の発達障害の支援ニーズが増大している状況が認識されてきた。こうした背景から、「従来の事業を維持するだけでよいのか」という問題意識が高まり、見直しの時期であるとの意見が出てきていた。
2.中核機能の均一化に向けた事業再構築
児童福祉法改正により令和6年度から児童発達支援センターが地域の中核機能を担うと規定されたことを踏まえ、県として、児童発達支援センターに相応の役割が果たせるよう支援していく必要があると考えた。そこで県は、これまでセンターごとに個別委託してきた事業を一度整理し、再構築することで、センターに対する真に必要な支援を再検討する機会とした。センターが実施すべき事業を抽出し、これらを機能強化事業として一つのパッケージにまとめ、県内すべてのセンターに同様に委託する形に再編した。従来は特定のセンターにのみ委託していた事業もあったが、「児童発達支援センターであれば同様の役割を担うべき」であるとの考えから、この仕組みに改めることとしたものである。
3.県委託による支援体制と財政的枠組み
本事業は、国が示す児童発達支援センター中核機能を基盤とし、県独自の展開を図るものである。市委託のみの場合には対象が当該市民に限られてしまうが、県が委託することで、市町さらには圏域を越えて県内どこからでも相談や支援につながる体制を確保していく。
委託内容の統合と県児童発達支援センターに求められる役割
1.再構築後の委託内容とその特徴
委託内容は、二つの必須事業と一つの任意事業から構成されている。
①障害児等及びその家族・支援者への療育指導(必須事業)
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訪問による療育指導
巡回相談:障害児等の家庭に定期的若しくは随時訪問し、各種の相談・指導を行う。
訪問による健康診査:医療機関等で健康検査を受けられない障害児等を訪問して健康診査等を実施。
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外来による療育指導(障害児等及びその家族・支援者に対し、外来での各種の相談・指導を行う)。
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療育機関に対する支援(障害児通所支援事業所や障害児保育を行う保育所等の療育機関に対する支援)。
②障害児やその家族に対する支援について(必須事業)
ペアレント・プログラム、ペアレント・トレーニング、親子教室のいずれかを1クール以上実施。親子教室は従来の親子療育と大きな差異はないが、受給者証支給決定前の親子を対象とする点が特徴である。親子教室については1回につき6組程度の小集団で実施している。これらの事業については、開催場所等を県ホームページに掲載し、周知を図っている。
③選択事業(任意事業)
①及び②の必須事業に加え、地域の実情に応じて、地域全体の支援者を対象とした研修会や事例検討会の開催、発達障害の特性や必要な配慮に関する普及啓発、夏休み等における活動の場の提供などの支援に取り組むことが可能である。
2.県児童発達支援センターが果たす役割と教育と福祉の連携
佐賀県では県立の児童発達支援センター「くすのみ園」(佐賀県療育支援センター「あそしあ」における事業の一つ)が設置されており、他センターと同様の業務を担っているが、それとは別途、県の直営として、県内の児童発達支援センターに勤務する支援者の実践スキル向上に向けた研修の企画・実施などの役割も担っている。研修事業では、発達障害に関する知識・技能の向上を目的とした研修を実施している。毎年、県内外の専門家を招聘して多様な講座を提供している。併せて、福祉分野の職員や特別支援教育に携わる教員が学びやすいようオンデマンド配信を行うなど、研修環境の整備にも取り組んでいる。令和7年度は、基礎研修18講座、実践研修11講座、保護者向け研修7講座、現場研修4回、特別研修1講座を企画。学校教員の受講者数は近年増加傾向にあり、令和6年度は85人、令和7年度は、研修参加教員が135人となり前年度を上回っている。令和7年度には、本研修の一部が、教員研修計画の「中堅教諭等資質向上研修」の「教育相談・生徒指導、特別支援教育に関する研修」の選択対象となったこともあり、研修環境整備とも相まって、今後、更なる教員の研修受講者増が期待されている。中堅教諭等資質向上研修の選択対象となった背景としては、受講側である教員の研修ニーズが多様化していること、また、本研修が対象となる教員にとって特別支援教育や幼児教育等の資質向上に資することが挙げられる。
佐賀県療育支援センターには、「県研修員・人事異動交流人事」制度により、特別支援学校教員1名分の配置枠が設けられている。配置された教員は療育支援センターにおいて実地の業務に従事する。本制度は令和3年度に創設され、令和7年度現在も継続して実施されている。任期は原則2年間で、現在は3人目の教員が本制度により配置されている。教員との人事交流は障害福祉課においても行われてきたが、令和7年度は実施されていない。これまでに障害福祉課に在籍した教員からは、総合支援法に基づく事業所の管理運営への理解を深める機会となり、その経験を学校現場における児童生徒への支援に活かすことができたとして、人事交流の効果が評価されている。
強度行動障害児者支援における医療・福祉・教育の連携
1.佐賀CB支援ネットにおける多職種ネットワークの形成
佐賀県では、強度行動障害を有する児者が地域生活を送るための必要な支援について、知事と福祉関係者の協議の場が設けられ、肥前精神医療センターの医師から支援に関する提案が行われた。さらに県議会議員からこれを推進すべきとの提言もあり、県が施策に着手する動きが本格化した。平成25年より「強度行動障害支援者養成研修」が開始され、平成30年には医療・福祉分野を中心とした「さが行動障害支援者ネットワーク」が立ち上がった。さらに令和2年には同ネットワークを基盤として佐賀CB支援ネットが組織(民間組織)され、多職種によるチーム体制が構築された。佐賀CB支援ネットでは、医療・福祉に加え特別支援学校教員も参画し、外部講師による研修や事例検討が定期的に実施された。行政もこれに参加し、県が取り組む施策の基盤に発展した。
2.強度行動障害支援部会の設置と「強度行動障害支援者フォローアップ研修」創設
令和3年に実施した強度行動障害に関する実数調査結果を踏まえ、県は令和4年度に発達障害者支援地域協議会の作業部会として「強度行動障害支援部会」を設置した。構成は学識経験者、当事者・家族、医療・保健・福祉・教育の関係者であり、強度行動障害に関する施策の企画・検討、関係機関との連絡調整を担った。部会では、佐賀CB支援ネットで行われていた研修・事例検討の蓄積を参照して意見交換、そこで出された意見をもとに県において「強度行動障害支援者フォローアップ研修」が計画され、令和5年度から毎年実施されている。
3.強度行動障害支援者フォローアップ研修と教育分野の参加促進
県は、強度行動障害支援者フォローアップ研修の実施に当たり、これを「佐賀県強度行動障害支援推進協議会」に委託した。この協議会は、佐賀CB支援ネットで中心的に活動していた者により一般社団法人として設立された組織である。
本研修は、強度行動障害児者の支援に携わる医療・福祉・教育の現場職員を対象に、知識・支援技術の向上と他分野理解・連携強化を目的として実施される。標準的なカリキュラムに沿い、1回3時間以上・全4回で構成される本研修では、事例を持ち寄り、自閉症の特性や氷山モデルを軸に支援の組み立て方を学ぶ。第1回及び第4回の研修では所属長の参加を求めており、個人の学びにとどまらず、組織全体の支援力向上につなげる仕組みとして位置づけられている。とりわけ、研修の冒頭と締めくくりに所属長が関与する点が、この研修の重要な特徴である。令和6年度には病院、特別支援学校、児童入所・児童通所、生活介護、入所施設、グループホームなど医療・教育・福祉に携わる者が共に学ぶ形が整った。
県は企画段階から特別支援学校教員の参画を重視し、障害福祉課が教育委員会特別支援教育室に対して直接、協力を依頼した。併せて教育長に対しても直接説明・依頼を行った。こうした手続きを経て、障害福祉課は特別支援学校校長会において本企画の趣旨を説明、教員の積極的な参加などを呼びかけている。これら一連の取組により、教員の異動先においても研修内容が共有・伝達されるなど強度行動障害支援を学ぶ教員の裾野の広がりを見せており、結果として、強度行動障害を有する児童生徒への支援に関する考え方が現場に浸透し、実践へと発展していくことが期待できる。
4.強度行動障害支援アドバイザーの役割とフォローアップ研修との連動
県はまた、佐賀CB支援ネットにおいて中心的な役割を担っていた医療・福祉・教育等の専門家を「強度行動障害支援アドバイザー」として委嘱している。アドバイザーは、強度行動障害支援者フォローアップ研修受講者の所属事業所を訪問し、現場での支援に関する専門的な助言を行う役割を担う。訪問は原則として2名以上で実施し、支援方針の整理や環境調整に関する助言を通じて、支援の質の向上と支援者の技術向上を図っている。 また、アドバイザーは、フォローアップ研修において講師・ファシリテーター・スーパーバイザーも務める。研修で受講者が取り扱った事例について前述の事業所訪問、助言に繋げており、研修とアドバイザー派遣が両々相まって支援の向上が図られる仕組みとなっている。 令和6年1月時点では、14事業所に対して延べ39名のアドバイザーが派遣されている。なお、フォローアップ研修及びアドバイザー派遣は、発達障害児者地域生活支援モデル事業(厚労省)を活用し佐賀県強度行動障害支援者サポート事業として実施されたものである。 その他強度行動障害に関する実態調査を実施し、より的確かつ幅広い調査を行っている(図1)。

参考図1. 本コンテンツにおける関係機関相関図(佐賀県からのヒアリングに基づき発達障害情報・支援センターにおいて作成)
参考表1.本コンテンツにおける強度行動障害支援体制整備の経過
| 年 |
経過 |
| 平成25年度 |
佐賀県強度行動障害支援者養成研修を開始 |
| 平成30年度 |
さが行動障害支援者ネットワーク(民間組織)の発足 |
| 令和2年度 |
佐賀CB支援ネット(民間組織)の発足 |
| 令和3年度 |
強度行動障害に関する専門性の高い医師の要望により、県が強度行動障害に係る実数調査を実施 |
| 令和4年度 |
佐賀県発達障害者支援地域協議会の作業部会として、強度行動障害支援部会を設置 |
| 令和5年度 |
強度行動障害支援者フォローアップ研修及び強度行動障害支援アドバイザー派遣を開始 |
| 令和6年度 |
佐賀県強度行動障害支援推進協議会(民間組織)の発足 |
| 令和7年度 |
県が強度行動障害に係る実態調査を実施 |
参考となる自治体資料・HP(アクセス日:令和7年12月2日)
担当部局:健康福祉部障害福祉課 <TEL:0952-25-7064>
掲載日:令和8年3月31日