発達支援における自治体取組データベース ~家庭と教育と福祉がつながる事例集~(つながる実践DB)
はじめに
発達障害をはじめ、特別な支援や配慮を必要とするこどもの支援には、家庭と教育と福祉の連携が不可欠です。本データベース(つながる実践DB)では、このようなこどもへの支援を「発達支援」と位置づけ、各自治体における発達支援の取組を、教育分野と福祉分野の担当部署の皆さまが活用しやすい形で整理・掲載したものです。 自治体の種類や地域、各自治体が回答した特徴的な取組内容をもとに、必要な情報にスムーズにアクセスできるよう構成しています。構築経緯などの詳細は、「発達支援における自治体取組データベース~家庭と教育と福祉がつながる事例集~の経緯等について」(PDF:278KB)をご覧ください。
こどもサポートシートと幼保小の架け橋プログラム / 教育委員会による連携支援
| 自治体区分 | 中核市 | 地方区分 | 北海道・東北 |
|---|---|---|---|
| 取り組みの特徴を表すタグ | #幼保小架け橋プログラム #連携のための会議 #引継ぎシート | ||
取組に関する情報
| 自治体名 | 青森県 青森市 |
|---|---|
| 取組の概要 | 青森市教育委員会では、令和5年度から「幼児教育・保育と小学校教育の円滑な接続に関する取組(幼保小の架け橋プログラム)」に取り組んでいる。市内全小学校長、園長、青森県あおもり幼児教育センター、障がい者支援課、こども・若者政策課、子育て支援課、あおもり親子はぐくみプラザ等が一堂に会する「幼保小連携推進協議会」を開催するとともに、小学校長が、その小学校に入学予定のこどもの在籍している全ての園に呼びかけて、各小学校において「合同会議(オアシス会議)」を開催することで、市全体を対象及び小学校区単位を対象とした会議体制を整えた。 また、就学に向けた支援情報の引き継ぎ方法に統一性がないという課題に対応するため、モデル地区に指定された小学校がその校区内の幼稚園・保育所・認定こども園(以下、園と記載)と協働で「こどもサポートシート」を作成した。このシートは教育委員会に提供され、教育委員会が後に市内共通のひな形として整備したことで、現在は市全体での活用が進められている。 |
| 取組の関係部署 | 青森市教育委員会 指導課 教育支援室 福祉部 障がい者支援課 |
自治体に関する情報
自治体ホームページ
https://www.city.aomori.aomori.jp/
総人口と総人口に占めるこどもの比率
| 総人口 | 267,520人 | 総人口に占めるこども比率 | 14.4% |
|---|---|---|---|
| 出典 | 総務省住民基本台帳 R6.1.1 *本表における「こども」とは、総務省住民基本台帳に準じ0歳以上19歳以下の者を指します。 |
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教育・福祉関連の地域資源情報
| 小学校 | 中学校 | 高等学校 | 特別支援学校 | |
|---|---|---|---|---|
| 公立 | 42校 | 19校 | 11校 | 8校 |
| 私立 | ― | 2校 | 5校 | ― |
| 特別支援学級・通級の設置状況 | 特別支援学級は全校配置 通級による指導:小学校2校、中学校2校 |
|---|
| 児童発達支援センター | 児童発達支援事業所 | 放課後等デイサービス | 放課後児童クラブ | |
|---|---|---|---|---|
| 市内 | 4施設 | 43施設 | 71施設 | 50施設 |
| 出典 | 青森市ホームページ よりR7.12.1 | |||
| 受給者証発行数(障害児) | 1,116名 |
|---|---|
| 出典 | 厚生労働省R6.3 |
配慮を必要とするこどもサポートシートと幼保小の架け橋プログラム
1.幼保小連携の課題と「こどもサポートシート」
青森市ではこれまで、就学に向けた支援情報の引き継ぎの統一的な手法が確立されておらず、各小学校が1月末から2月上旬にかけて園を訪問し、児童の情報を共有する形で行われてきた。聞き取り内容や記録方法は学校によって異なり、同じ幼稚園・保育園から複数の小学校へ進学する場合、園はそれぞれ異なる形式に対応する必要があり、現場は煩雑になっていた。例えば、同じ園に在籍する子どもであっても、ある小学校では「名前が言える」「ひらがなが書ける」といった学習面を中心に聞き取りが行われる一方、別の小学校では「友達との関わりが多い」といった社会性に重点を置いて情報を求めるなど、小学校の重要な視点は学校によって異なっていた。
油川地区でのモデル事業と「こどもサポートシート」の作成
「こどもサポートシート」の作成の契機となったのが、油川地区での実践である。文部科学省から「幼児教育・保育と小学校教育の円滑な接続に関する取組(幼保小の架け橋プログラム)」が示され、これを受けて青森県が募集した「幼保小の架け橋プログラム開発・実践研究」に青森市が申し込み、その研究のモデル地区として油川小学校が選定された。モデル地区となった令和5年当時、青森市私立幼稚園協会の会長は油川幼稚園の園長、青森市保育連合会の会長は野木和保育園の園長で、いずれも油川小学校区内に所在していた。また、教育委員会に異動する前の学校担当者は油川小学校で勤務しており、三者は顔なじみの関係にあった。このような人間関係の強みを背景に、「せっかく顔の見える関係があるのだから、園も学校も一緒に考えよう」との思いで、油川小学校と上記2園、これに油川小学校区に所在する別の2園も加わり、検討を重ねた。その中で、特別な支援を要するこどもの支援内容を小学校へわかりやすく引き継ぐための様式として「こどもサポートシート」が考案された。このシートは、幼稚園や保育所の枠を越えて、こどもの見方を共通化できるのではないかという考えのもとに作成された。
作成したシートは教育委員会に提供され、教育委員会は提供されたシートにアレンジを加え、全市共通のひな形として整理した(図1)。こどもサポートシートは、こどもの園での様子をチェック形式で記入する欄を設けるとともに、本人の「好きなこと・得意なこと」「嫌いなこと・苦手なこと」や園での支援内容を記述する欄などを設け、こどもの行動や生活状況、家族の様子などに関する情報を包括的に把握できる構成となっており、小学校が入学後の支援や人的配置を検討する際に活用できるようになっている。現在、全園においてシートの配付が行われ、全小学校においてシートの活用を進めている。
図1.こどもサポートシート(ひな形)
2.「幼保小の架け橋プログラム」と2つの会議体
令和4年度第1回子ども・子育て会議においては、幼・保・小連携の推進に関して厳しい指摘がなされるとともに、より一層の推進を求める意見が示された。令和5年2月、文部科学省より「学びや生活の基盤をつくる幼児教育と小学校教育の接続について―幼保小の架け橋期の教育の充実―」が発出された。青森市では令和5年度から「幼保小の架け橋プログラム」に取り組み、令和7年度で3年目を迎えている。
合同会議(オアシス会議)
幼保小の架け橋プログラムの推進にあたり、障害のある子を含む特別な支援を要するこどもに関する情報の引継ぎや、就学後の支援内容について関係者間で情報を交換することを目的として、小学校長が、その小学校に入学予定のこどもの在籍している全ての園に呼びかけて各小学校で開催する「合同会議」を、概ね令和5年度から継続している。
なお、青森市は、公立の園を設置していないため、私立園と小学校との間での合同会議となる。この取組は、「青森市こども計画(令和6年度~令和10年度)」にも位置付けられている。
幼保小連携推進協議会
協議会設置の背景と目的
青森市では、以前から、小1プロブレムへの対応、特別な支援を必要とするこどもへの対応、不登校児童への対応といった課題を抱えており、これらの課題解決に向けた取組が求められていた。こうした背景を踏まえ、園と小・中学校教育との望ましい連携の在り方を模索し、円滑な接続を図ることを目的として、令和5年度に教育委員会が「幼保小連携推進協議会」を設置した。
協議会の取組内容と効果
令和5年度設置当初の協議会では、園長と小学校長をつなぐ場として、子育て支援課、障がい者支援課、あおもり親子はぐくみプラザなどの関係機関を招集し、情報交換や、文部科学省の主導する「幼保小の架け橋プログラム」の趣旨説明を行い、連携の基本的な方向性を共有した。こうした取組により、従来は子育て支援課を介して行われていた教育委員会から園への依頼や連絡が直接行えるようになった。
一方、園側からも「自園の取組を教育委員会に見に来てほしい」といった主体的な働きかけが生まれるなど、園と教育委員会との連携が進展した。令和7年4月の開催では、市内全143園のうち7割を超える112園の園長らが出席、出席者数は、全体で250名に達した。その会では、障がい者支援課による取組や関連制度の紹介、子育て支援課との連携ルートに関する情報提供のほか、「保育所等訪問支援」を行っている事業所の活動紹介等も行った。このような協議会活動の結果、学校側における福祉施策や支援制度への理解が深まり、関係機関との連携に対する心理的なハードルが低下した。相談先が明確になったことで、教育現場から福祉機関への相談や支援依頼が円滑に行われるようになり、支援制度への理解が定着しつつある。合同会議(オアシス会議)と幼保小連携推進協議会の双方の会議を通じて、園の職員と小学校の教員の交流が深まり、相互理解が高まった。その結果、特別な支援を必要とするこどもたちの架け橋期の接続が円滑となり、教育的支援の充実や保護者の不安の軽減につながった。
幼保小連携推進協議会は大規模であることから、開催の継続にあたっては、日程や会場等を含めさまざまな工夫を検討している。
教育委員会による連携支援
教育委員会による連携支援の実際
以前は、福祉サービス事業所と学校との連携が円滑に進まないことにより課題の解決が難しく、そのため、教育委員会に仲介を求めるケースも見られた。当時は、「保育所等訪問支援」という制度自体が学校現場に十分周知されていなかったが、教育委員会が仲立ちとなり、福祉側と学校側が互いの実情を理解することで、連携が徐々に円滑に進むようになった。例えば、放課後等デイサービスでは職員との関係が良好である一方、学校では友人との関わりに困難がみられる児童がいた。放課後等デイサービスでの支援方法の中に良好な人間関係を築くヒントがあり、それは学校でも活用可能な内容であったが、情報共有が十分にできていなかった。そこで、教育委員会が教育現場と福祉機関の間に入り、放課後等デイサービスでの支援方法を学校でも活用するための調整を行った。具体的には、放課後等デイサービスで実施していた「自由時間の過ごし方」の支援を学校でも取り入れ、そのこどもに対し、視覚的ツールを用いて「今日は何をして遊ぼうか」と示したり、友達への声かけの仕方を教えたりした。その結果、学校の友人との関係が改善された。
保護者、放課後等デイサービス、学校の仲立ちを担った教育委員会の指導主事は、特別支援学校での従事経験があることから、教育現場が医療や福祉と連携することでこどもへの支援が豊かになり、担任の悩みが軽減される経験を持っていた。
学校側には、当初、教育委員会以外の関係者が学校を訪問することに対して抵抗感があり、「自分たちは十分に取り組んでいる」という意識から外部支援の受け入れに慎重であった。しかし、最近では、「学校だけでは対応が難しい」「福祉の側でも現状では困難がある」といった、互いの立場や役割を理解していると思われる発言が増えている。こうした理解が、「共に支援体制を構築していこう」という意識にもつながり、連携の基盤が整いつつある。現在では、教育委員会が「保育所等訪問支援」の説明を行わなくても、保護者から訪問支援の利用希望が出された場合には、保護者に確認の上、学校から事業所に連絡するという話も聞かれる。また、学校で課題が発生した際に、「しばらく様子を見よう」といった対応ではなく、オンラインでケース会議を開催する、関係者が学校に集まって協議するといった迅速な連携が定着した。
*文部科学省「学びや生活の基盤をつくる幼児教育と小学校教育の接続について~幼保小の協働による架け橋期の教育の充実~【概要】」(PDF:480KB)より要約 |
参考となる自治体資料・HP(アクセス日:令和8年3月9日)
- 令和4年度第1回子ども・子育て会議 青森市子ども・子育て会議
- 幼保小の架け橋プログラム 文部科学省
- 幼保小の架け橋プログラムの実施に向けての03_手引き(初版)文部科学省
- あおもり親子はぐくみプラザ 青森市はぐくみプラザご案内 青森市ホームページ
- 青森市こども計画(令和6年度~令和10年度) 青森市ホームページ
- 学びや生活の基盤をつくる幼児教育と小学校教育の接続について~幼保小の協働による架け橋期の教育の充実~【概要】文部科学省
担当部局
- 青森市教育委員会 事務局 指導課
- (TEL)017-718-1869
- 青森市教育委員会 事務局 指導課 教育支援室
- (TEL)017-765-1507
- 青森市役所福祉部 障がい者支援課 障がい福祉チーム
- (TEL)017-734-5327
掲載日:令和8年3月31日