「藤枝型発達支援システム」の構築
1.連携の土壌となる計画
「発達に課題のあるこども・若者及びその家族へのきめ細かな支援」は、市の最上位計画である『第6次藤枝市総合計画』に掲げられた基本目標「こどもが健やかに学び育つ藤枝づくり」の施策の一つである「発達支援体制の充実」に位置づけられている。
また、途切れのない一貫した発達支援を行うため、平成26年3月に『藤枝型発達支援システムの基本方針』が策定され、平成28年3月には5年計画として『藤枝型発達支援システム構築のための行動計画』が策定された。その後、令和3年3月には『第2期藤枝型発達支援システム行動計画』が策定され、取組の継続とともに、「自立支援協議会こども支援部会の充実」や、「中学校から高等学校への移行支援の充実」等、更なる具体的な施策の推進が位置づけられた。令和7年度からは、これらの施策が、市の『こども計画』に包含され、統合的かつ継続的に展開されている。
さらに、『藤枝市教育振興基本計画』においても、「途切れのない発達支援体制の充実」を施策の一つに掲げて取組を進めている。
こうした取組の推進は、平成20年6月から就任している市長のリーダーシップによるところが大きい。市長は「発達支援」を公約に掲げ、「どんなに良いことも市民が知らなければ意味がない」との信念から、発達支援施策の具体化と市民への積極的な情報発信を重視し、継続的な施策の展開を主導してきた。
2.「途切れのない発達支援」体制の構築
藤枝市においては、「途切れのない発達支援」をはじめ、全てのこども・若者に対する一貫した包括的支援を行うため、順次、体制の整備を進めてきた。以下に、「子ども・若者総合サポート会議」設立までの経緯を示す。
(1)支援体制構築の契機と初期の連携
藤枝市においては、母子保健の支援が3歳児健診をもっていったん途切れてしまうことで、児童福祉との連携が必ずしも円滑に行えておらず、特に、発達障害をはじめとした「特別な支援を必要とするこども」への継続的な支援に支障をきたしていたとの認識が、母子保健と児童福祉の双方にあったことに「途切れのない発達支援」構築の議論は始まる。
定期的に開催されていた「母子保健福祉担当者連絡会」が、平成14年度からは「母子保健福祉地域ケアシステム推進会議」として再編された。これにより、母子保健と児童福祉現場との定期的な情報共有と支援の検討の場が構築され、連携が本格化した。
(2)要保護児童対策地域協議会の設置と教育分野との連携
より広範な支援ニーズに対応するためには、母子保健と児童福祉の連携にとどまらず、教育分野や関係機関を含めた包括的な支援体制の構築が必要ではないかとの議論が高まっていった。
藤枝市では、児童福祉法改正により要保護児童対策地域協議会(以下「要対協」という)の設置が努力義務とされた平成16年から、要対協設置の検討を開始した。
虐待や保護者の養育力に課題がある家庭のこどもたちを含め、支援を要するこどもたちへの対応を包括的に検討できる場とするため、要対協の下部組織である実務者会議(部会)のあり方も含め、関係機関が協議を重ねた。
その一つとして、当時の教育委員会の指導主事の働きかけにより、教育委員会が所管する「児童生徒指導支援会議」を、要対協の実務者会議に位置づけることとされた。教育分野との連携により、非行や不登校といった課題も共有できる体制となった。
(3)発達支援体制の基盤整備と部会の再編
「母子保健福祉地域ケアシステム推進会議」も要対協の実務者会議の一つとして再編され、「母子ケア部会」と改称された。
平成17年の発達障害者支援法の施行を受け、平成21年度には社会福祉課(現障害福祉課)に発達支援係が新設され、翌年度の子ども家庭相談センター(現こども・若者支援課)の設立にあわせて「母子ケア部会」は「発達支援部会」と改称され、対象は0歳から18歳未満の発達障害をはじめとする「特別な支援を必要とするこども」とその家族等とされ、発達支援システムの構築に向けた基盤整備が進められた。
こうした体制整備により、発達障害をはじめとする「特別な支援を必要とするこども」に対しては、母子保健が担ってきた虐待予防と、虐待に至る要因の一つである発達障害の課題への対応とを並行して行うことなども含めた包括的な対応が可能となった。
(4)こども・若者支援体制の統合と発展~「藤枝市子ども・若者総合サポート会議」の設立~
令和4年度からは、要対協と「子ども・若者育成支援推進法」に基づく「藤枝市子ども・若者支援地域協議会」を統合し、「藤枝市子ども・若者総合サポート会議」として再編、藤枝市におけるこども・若者の一貫した包括的な支援ネットワークが構築された。その際、子ども・若者支援地域協議会の実務者会議機能は「若者支援部会」の形でサポート会議に加えられている。
(5)「藤枝市こども・若者総合サポート会議」の構成と活動
藤枝市こども・若者総合サポート会議」は、現在、以下のように構成され活動している。
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①代表者会(年2~3回)
関係機関の代表者が集まり、全体方針や連携の方向性を確認する。
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②児童虐待・DV部会(年10回)
児童虐待やDV等の事案を取り扱う。
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③児童生徒指導支援部会(年11回)
不登校、問題行動(非行を含む)、いじめの3分類で数十件のケースを扱い、委員間で全件を共有、うち、特に検討が必要なケースについて協議を行っている。
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④発達支援部会(年4回)
幼稚園・保育所・認定こども園等で把握している発達に特別な配慮を要するこども約700人のリストのうち、特に支援が届きにくい困難ケース(10〜20件程度)を登録し、継続的に検討している。近年は、5歳児健診のあり方や、児童発達支援センター入園児の選定、医療的ケア児の就園支援なども協議の対象となっている。
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⑤若者支援部会(年4回)
中学校卒業後の若者への支援などについて協議する。主に、進路が定まらず自宅にいる若者が協議の対象であり、就労系の支援機関の参加が多いことが特徴である。
図1 「藤枝市子ども・若者サポート会議」藤枝市資料より
3.こども未来応援局の設置と教育部局との連携
(1)こども未来応援局の設置と体制整備
藤枝市では、こどもに関する支援機能を一元化し、関係部門の連携を強化するため、令和3年度に「こども未来応援局」を設置した。同局には、児童課(現こども課)、子ども家庭課(現こども・若者支援課)、及び「子ども発達支援センター(現こども発達支援課)」が設置され、さらに、教育政策課(教育委員会)と同一フロアに集約された。物理的な距離の近接化によって、日常的な連携や情報共有がしやすい環境が整えられた。
(2)支援窓口の一元化と機能強化
令和5年度には、「こども家庭センター」の機能を「こども未来応援局」に位置づけ、母子保健を含むこどもに関する支援窓口を一元化した。
さらに、令和7年度には、局内に設置されていた「こども発達支援センター」を「こども発達支援課」へと発展的に再編するとともに、これまで障害福祉課が担っていた障害児支援給付事業も同課に統合、こどもの発達支援を集約することで、組織としての位置づけを強化した。
(3)教育部との連携強化と意思決定の場の創設
こども支援に関する事業検討や他部局への協力要請を行う場として、「教育部とこども未来応援局連絡会議」が設置され、両部局の部長・課長級職員が参加する管理職会議が年4回開催されている。この会議は、次年度の事業方針や連携の在り方について協議する意思決定の場となっている。
例として、この連絡会議での協議を経て、令和7年11月より、これまで必ずしも保護者に適切に提供されていなかった計画の保護者への提供を徹底、保護者に配布していた「サポートファイルそらいろ」(学校で作成される「個別の教育支援計画」、放課後等デイサービス事業所による「個別の放課後等デイサービス計画(個別支援計画)」、相談支援事業所による「障害児支援利用計画」の三つの計画を一元管理できるファイル)を活用し、保護者の承諾のもと、関係機関がこれらの計画を共有する取組を推進することとした。この取組は、「支援計画の共有による療育支援の一層の充実について」として、こども発達支援課から放課後等デイサービスを利用するこどもの保護者に向けて、学校を通じて周知・配布された。
図2 「支援計画の共有による療育支援の一層の充実について」 藤枝市資料より
4.こども発達支援課の人員体制と業務
こども発達支援課では、障害児支援給付事業、発達支援事業、巡回支援推進事業、人材育成・啓発事業、子ども・若者総合支援推進事業、家庭・教育・福祉連携推進事業、子ども・若者居場所事業など、多岐にわたる業務を担っている(図3参照)。
本項では、これらのうち「発達支援事業」「子ども・若者居場所事業」「家庭・教育・福祉連携推進事業」に加え、その他の取組として「中学校・高等学校間の移行支援体制の構築」及び「自立支援協議会こども支援部会の再構築」について紹介する。
図3 「こども発達支援課事業」藤枝市資料より
(赤字は教育部との連携事業)
こども発達支援課の取組
(1)人員体制
令和7年4月現在、こども発達支援課には、課長のもとに、公認心理師(地域連携推進マネジャー)4名、保育士3名、学校巡回支援員1名、専門相談員(元特別支援学校教員)2名、事務職員2名が配置されている。
図4 「こども発達支援課の職員構成」藤枝市資料より
(2)発達支援事業
発達支援事業では、就学支援や学校現場での支援計画策定に必要な検査を中心とした支援を行っている。依頼対象は、「校内就学支援委員会に挙がる児童生徒」や「個別の指導計画作成対象の児童生徒」であり、学校からの依頼に基づき、こども発達支援課に所属する心理士4名が、年間300件以上の発達検査を実施している。
検査結果は、保護者と学校職員(担任・特別支援教育Co.等)との面談(支援の確認と検討)の際に情報共有している。また、こども本人への障害特性に関する説明については、保護者と相談のうえ、受け止められる状態であると判断された場合には、表現を工夫した資料を用いてこども発達支援課の心理士が直接説明を行っている。
(3)子ども・若者発達支援居場所事業
藤枝市では、「不登校状態にあるこどもの支援」を重点的な取組の一つとして位置づけており、令和6年6月より、「学校に行けない」又は「学校に行かないという選択をしている」こどもたちが、安心して過ごせる環境のもとで、自ら歩む力を育むことを目的とした「子ども・若者発達支援居場所事業」を、委託事業として開始した。
こども発達支援課は、本事業の実施に当たって、事業の対象とする児童生徒の基準や支援内容について学校側と協議を重ねた。
こども発達支援課で発達検査を実施した児童生徒のリストと、不登校児童生徒のリストとを照合し、その結果、不登校児童生徒の約4割が発達課題を抱えていることが明らかとなり、本事業の対象を「発達の課題などが原因で不登校状態にある児童生徒」とした。
このデータを基に、学校を通じて対象児の保護者に居場所事業の紹介文書を送付し、利用を促したところ、令和6年度の事業開始時点で26名が「居場所」に登録した。
「居場所」には、元特別支援学校副校長など、発達障害児者への対応に関する知見を有するスタッフを支援者として配置しており、例えば、登校が困難であった生徒が、「居場所」に通うことで生活リズムが整えられ、自ら進路を考えられるようになり、通信制高等学校に進学する事例も報告されている。
居場所事業の受託者は、(こどもの様子を記録した)月次報告書をこども発達支援課に提出している。こども発達支援課から各学校に送付しているが、必要に応じて、教育政策課と情報を共有している。
(4)家庭・教育・福祉連携推進事業
藤枝市では、令和5年度より厚生労働省地域生活支援事業である「家庭・教育・福祉連携推進事業」を活用して、市の公認心理師(地域連携推進マネジャー)が教育政策課と連携して、学校への支援体制の強化に取り組んでいる。
ここでは、小中学校を対象とした、学校巡回支援及び発達支援連携学習会について紹介する。
① 学校巡回支援
<取組の概要と目的>
本取組は、小・中学校の発達支援事業において実施した検査のフィードバック後、校内支援のみではなかなか課題解決が難しい児童生徒について、学校巡回支援員(元小学校校長かつ特別支援教育士)と地域連携推進マネジャー(公認心理師)がペアで関わり、学校及び家庭での支援を再検討して、適切な助言等を行うものである。学校と家庭が共通理解のもとで支援に取り組める体制の構築を目的としている。
<実施手順>
令和4年度から令和7年7月末までに、延べ13校(市内27校中)、38名の児童生徒に対して実施した。以下の手順により実施している。
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ⅰ 保護者および学校からの事前情報の提出
保護者:現在の困り感、検査後の取り組み内容および変化等
学校:現在の困り感、支援の実施状況、保護者との情報共有状況等
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ⅱ-1 当日の授業中の児童生徒の行動観察(学校巡回支援員と地域連携推進マネジャーが実施)
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ⅱ-2 放課後に学校関係者(担任・特別支援教育コーディネーター等)および保護者へのフィードバックと、校内・家庭における今後の支援方針の検討
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ⅲ 必要に応じた相談対応および再巡回の実施
なお、巡回支援では対応が難しい、継続的な支援を要する家庭については、こども発達支援課の常設相談において、元特別支援学校教員の相談員が関わり、時間をかけた支援を行っている。
② 発達支援連携学習会
本学習会は、こども発達支援課と教育政策課との共催により、小・中学校の教職員を対象に実施している。発達障害の特性に加え、家庭の事情等、複合的な課題を有する児童生徒への支援について、校内及び多機関・多職種による支援の在り方を学ぶことを目的として実施している。令和5年度より開始し、令和7年度末までに延べ16校で実施した。
勉強会の流れは以下の通りである。
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ⅰ 実施校は年度ごとに教育委員会が選定し、学校単位で開催している。
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ⅱ 学校から提示された事例について、地域連携推進マネジャーが情報を整理したうえで、教職員をグループに分けてワークを実施し、支援方法の検討を行う。グループワークの際のファシリテーターは、地域連携推進マネジャーが務める。
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ⅲ その後、子ども・若者総合サポート会議スーパーバイザー(臨床心理を専門とする大学教授)や特別支援学校教員が講評を行い、事例に対する支援について理解の促進を図っている。
参加した教員からは、「他機関との連携の必要性や方法を学ぶ契機となった」「外部関係者との協働の重要性を実感した」との声が寄せられており、学校と福祉行政との関係性強化にも資する取組となっている。
(5)その他の取組
① 中学校・高等学校間の移行支援体制の構築
藤枝市では、義務教育段階での支援にとどまらず、高等学校への進学に際しても、「途切れのない支援」体制の構築に取り組んでいる。
中学校・高等学校間の移行支援体制の場は、市内中学校と市内全高等学校を対象に、平成25年度に「ふじえだ型発達支援システムにおける高等学校(市内)情報交換会」として設置された。しかし、平成30年度には、個人情報の取り扱いに関する認識の違いから、やむを得ず一定期間の中断を余儀なくされた。
一方、静岡県教育委員会においては、令和2年10月に、発達障害を含む特別な支援を必要とする生徒が切れ目のない支援を受けられるよう、中学校から県立高等学校への支援情報の引継ぎを促進する「切れ目のない支援を行うための引継ぎガイドライン」の導入が始まった。ガイドラインでは、個別の教育支援計画や個別の指導計画等を活用し、保護者の理解と同意を得たうえで、合格発表後に支援情報を高等学校へ引き継ぐなど、県内共通の方法で支援体制の整備が進められていた。
令和3年度から始まった「第2期藤枝型発達支援システム行動計画」において、「教育と福祉の連携推進」が重点政策として掲げられ、その中に「義務教育以降の支援体制の構築」が位置づけられたことを背景に、令和3年度より「藤枝市中学校・高等学校等の移行支援体制に関する情報交換会」が再開された。
市内の全高等学校と中学校が、年1回だけであるが、特別な配慮を要する中学校生徒について、在籍する学びの場や医療受診の有無、学習面・行動面での配慮事項などが、当該中学校から入学予定の高等学校へ個別に伝達される。
この際、円滑な引継ぎを行うために、中学校が事前に保護者へ、高等学校への情報引継ぎの目的や利点を説明し、理解と同意を得ている。特に、引継ぎは合格発表後に行われること、引き継がれる情報によって合格が取り消されることはないことを丁寧に伝えている。
情報交換会では、高等学校側から「入学した生徒を無事に社会へ送り出すためにも、必要な支援や配慮に関する情報を事前に提供してほしい」という声が多く上がり、その熱意が中学校側にも伝わり、中学校からの情報提供が年々、質・量ともに充実しており、個別の教育支援計画や個別の指導計画等の情報を用いて、中学校から進学予定の高等学校に伝達される学校も増えてきている。さらに、今後は、近隣地域の高等学校への支援情報の引継ぎにも取り組んでいく予定である。
② 自立支援協議会こども支援部会の再構築
これまで障害福祉課が事務局を担っていた、自立支援協議会のこども支援部会は、グループワークを中心に実施していたが、事業所間の課題共有にとどまり、具体的な改善策や実践的な取組につながりにくいという課題が指摘されていた。
組織改組に伴い、令和7年度からこども発達支援課が事務局を担うこととなり、まずは市内の発達支援体制を学び直す場として、部会の再構築を図っている。
令和7年度は、民間の児童発達支援センターが実施する「児童発達支援事業所連絡会」や「放課後等デイサービス事業所連絡会」通じて把握された課題について、部会で検討している。また、事業所間で支援の質に差が見られることから、市が実施する研修会への参加を促し、支援の質の向上を図っている。
参考となる自治体資料・HP(アクセス日:令和8年4月15日)