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発達支援における自治体取組データベース ~家庭と教育と福祉がつながる事例集~(つながる実践DB)

はじめに

発達障害をはじめ、特別な支援や配慮を必要とするこどもの支援には、家庭と教育と福祉の連携が不可欠です。本データベース(つながる実践DB)では、このようなこどもへの支援を「発達支援」と位置づけ、各自治体における発達支援の取組を、教育分野と福祉分野の担当部署の皆さまが活用しやすい形で整理・掲載したものです。 自治体の種類や地域、各自治体が回答した特徴的な取組内容をもとに、必要な情報にスムーズにアクセスできるよう構成しています。構築経緯などの詳細は、「発達支援における自治体取組データベース~家庭と教育と福祉がつながる事例集~の経緯等について」(PDF:260KB)をご覧ください。

長岡京市とりこぼさない支援体制整備事業(重層的支援体制整備事業)からの教育と福祉の連携

取組に関する情報

自治体名 京都府 長岡京市
取組の概要 ・令和3年4月の社会福祉法改正に伴い国が創設した「重層的支援体制整備事業」を受け、長岡京市では、令和4年度の移行準備事業を経て、令和5年度より「とりこぼさない支援体制整備事業」として本格的に事業を実施
・「とりこぼさない支援体制整備事業」全体の所管及び中核的事業である「多機関協働事業」の事務局を、健康福祉部地域福祉連携室くらし連携担当とした。
・「くらし連携担当」には、保健師、社会福祉士、さらに福祉相談員として教職経験者を配置し、その専門性を活かして多様な支援を展開している。
・教職経験者の福祉相談員は、教育と福祉の連携に主軸を置き、義務教育の前と後のつなぎ役として取り組むとともに、福祉と学校の通訳として、それぞれの間を取り持つ役割を担う。
取組の関係部署 健康福祉部  障がい福祉課
健康福祉部 地域福祉連携室 くらし連携担当
教育委員会 教育部 学校教育課 
教育委員会 教育部 教育支援センター

自治体に関する情報

自治体ホームページ

https://www.city.nagaokakyo.lg.jp/

総人口と総人口に占めるこどもの比率

総人口 82,308人 総人口に占めるこども比率 16.99%
出典 総務省住民基本台帳 R6.1.1
*本表における「こども」とは、総務省住民基本台帳に準じ0歳以上19歳以下の者を指します。

教育・福祉関連の地域資源情報

  小学校 中学校 高等学校 特別支援学校
公立 10校 4校  2校 1校
私立 1校 1校
特別支援学級・通級の設置状況

特別支援学級の設置校:小学校10校、中学校4校

通級による指導: 小学校10校、中学校2校

  児童発達支援センター 児童発達支援事業所 放課後等デイサービス  放課後児童クラブ
市内 12施設 35施設 14施設
出典

長岡京市ホームページ(R8.6.19)

障害児通所支援受給者数 518名
出典 厚生労働省R6.3

長岡京市とりこぼさない支援体制整備事業(重層的支援体制整備事業)からの教育と福祉の連携

1.「くらし連携担当」設立と「とりこぼさない支援体制整備事業」の概要

長岡京市では、地域住民が抱える複雑・複合的な支援ニーズに対応するため、平成23年度に「福祉なんでも相談室」を開設した。この窓口では、分野や年齢を問わず福祉や生活に関する相談を受け付け、問題の整理や必要な支援へのつなぎ、制度利用の総合調整や案内のほか就労相談なども担い、福祉的な総合相談を行う体制を整えた。その後、平成27年度には生活困窮者自立相談支援事業を開始し、令和3年度にはひきこもり相談支援窓口を設置、令和4年度にはアウトリーチ支援員を配置するなど、支援体制を着実に強化してきた。これらの取組により、重層的支援体制構築の基礎が整ったことから、令和4年度に研修会、組織改編検討などを行う「重層的支援体制整備事業への移行準備事業」を経て、令和5年度より「長岡京市とりこぼさない支援体制整備事業(国の「重層的支援体制整備事業」の市独自名称;以下、「とりこぼさない支援体制整備事業」とする)」として本格的に開始した。本事業の所管は、健康福祉部に新設された地域福祉連携室くらし連携担当である。「くらし連携担当」に前述の「福祉なんでも相談室」や「ひきこもり相談支援窓口」等の機能も内包している。

本事業は、既存の介護、障害、こども、生活困窮に関する相談支援等の取組を活かしながら、地域住民の複雑・複合的な支援ニーズに対し、様々な関係機関や地域住民等と連携・協働して対応するものである。具体的には、以下の5つの事業を一体的に実施することで、支援の質の向上と円滑化を図る。

  • 包括的相談支援事業
  • 地域づくり事業
  • 参加支援事業
  • アウトリーチ等を通じた継続的支援事業
  • 多機関協働事業

※各事業の概要は長岡京市とりこぼさない支援体制整備事業実施計画(下記図1)を参照

図1「長岡京市とりこぼさない支援体制整備事業(重層的支援体制整備事業)の概要」

長岡京市がこれまで整備してきた各相談窓口は維持し、それらが担当するケースの中で複雑化・複合化した課題を「くらし連携担当」が集約・整理する。そして、解決に向けたコーディネートを行うことで、横断的な連携を推進していく。

当事者や家族、支援者や地域住民らから相談が上がってきた際には、まずその課題に応じ、それぞれの分野の相談窓口が対応、分野を超える課題の場合には、「断らない相談」として「くらし連携担当(福祉なんでも相談室など)」や「総合生活支援センター」が一旦受け止める(包括的相談支援事業)。課題を整理していく中で、複雑化・複合化している事例については、「アウトリーチ等を通じた継続的支援事業」や「多機関協働事業」により対応。さらに、複雑な問題が解きほぐれた後には、対象者のニーズに応じ、「参加支援事業」や「地域づくり事業」により社会とのつながりを作る支援を行う。

こうしたプロセスで、関係機関との連携を図りながら、見守りや伴走支援を調整し、支援全体をコントロールするオペレーション機能を担うのが「くらし連携担当」の役割である。

2.「くらし連携担当」の業務内容と人員配置

(1)長岡京市 健康福祉部 地域福祉連携室 くらし連携担当の組織体制

令和5年度の組織改編により健康福祉部にあった社会福祉課が地域福祉連携室と生活支援課に組織改編・名称変更し、下記図のようになった。新たにくらし連携担当が地域福祉連携室に設置された。(図2:該当箇所のみ掲載)

(図2:広報長岡京2023年4月号P5を参考に、発達障害情報・支援センターにて作成)

(2)地域福祉連携室の業務内容について(長岡京市令和7年度行政機構と主な業務内容より)

地域福祉係:民生委員・児童委員、社会福祉協議会、災害時要配慮者名簿、自殺対策、地域福祉センター、総合生活支援センター、市営浴場、戦没者遺族・原爆被爆者援護、災害見舞金、(一財)乙訓勤労者福祉サービスセンター、日雇健保、 就労支援

くらし連携担当:福祉総合相談(福祉なんでも相談室)、生活困窮者自立支援、とりこぼさない支援体制整備、ひきこもり支援、孤独・孤立対策

(3)「くらし連携担当」の職員体制

現代は複雑かつ複合的な課題も多く、その解決には、福祉的な視点、暮らしや健康の視点、さらには、教育的な視点を持つ人材や、教育部門と福祉部門をつなぐ役割を果たす人材も重要である。そこで、それぞれの専門職が持つ強みを活かし、多職種でチームを組むことで相乗効果を生み出せるよう、長岡京市くらし連携担当では、保健師2名、社会福祉士1名の常勤職員3名と、教職経験者1名、地区別の相談員4名の会計年度職員5名、計8名体制で実務を行っている。

主な取組は「とりこぼさない支援体制整備事業」であり、これはゆりかごから墓場まで、すべての人を対象とする包括的な支援制度である。この事業においては、課題が複雑化し、単一の部署では対応が困難なケースに対して、他機関と連携しながら問題を紐解き、解決へと導くことを重視している。福祉分野内の部署同士は従来比較的連携しやすい傾向があるが、学校教育分野とは連携が難しい場面が多かった。これは、部署の性質や立場が異なり、福祉と教育の間に存在する“言語の違い”とも言える専門用語や価値観の差が、互いの理解の障壁となっていたことが要因として挙げられる。教職経験者の相談員が福祉部局であるくらし連携担当に配置されることで、教育委員会との橋渡し役、まさに“通訳”のような役割を担い、連携が円滑に進み、学校との協力体制を築くことが可能となっている。

3.教職経験者(相談員)の配置経緯と業務

(1)配置の経緯

現任配置の教職経験者は、市内小学校校長を定年退職後、教育委員会で勤務をし、長岡京市の教育支援センターにて教職員研修や教育・発達相談、不登校支援に従事。その後、令和5年度に健康福祉部に設立した地域福祉連携室くらし連携担当として重層的支援体制整備事業を推進する役割を担うようになった。

(2)業務

第一の任務は、義務教育期における児童及び保護者の(学校教育の枠を越えていると思われる)悩みを福祉につなぐことである。さらに義務教育終了後の不安定な状況にある若者を適切な支援につなぐといった業務も担う。また、就学前の保育・教育と義務教育との円滑な接続のための関係機関との連絡調整も重要な業務である。

(3)取組事例1~義務教育期の支援に関する取組

令和5年4月「くらし連携担当」設置以降、小中学校の校長会において、「とりこぼさない支援体制整備事業」の説明を毎年行い、これまで取り組んできた教育と福祉の連携事例を挙げ、気になることはいつでも地域福祉連携室に連絡するよう呼びかけを継続している。また、指導主事やスクールソーシャルワーカー(SSW)と情報交換・意見交換を行い、連携構築に努めている。これにより、例えば、学習面や教室の中での行動などからは特に配慮が必要と感じられないため、学校現場では把握しにくいが、ヤングケアラーなど家庭環境により支援の必要性が高いといったケースに対する福祉的アプローチを可能としている。

SSW、指導主事と情報交換する中で、SSWから「気になるケースがある」との報告があった。SSWが学校の下駄箱を確認した際、一人の児童の上靴のすり減り方が極端であり、数か月間同じ状態が続いていたことから、確認が必要でないかと感じたとのことで、三者で具体的な状況確認を進めることとなった。まず、学校の校長に確認を取ったところ、「その児童について特段の問題は報告されていないが、最近急に欠席が増えている」との情報が得られた。担任教員にも状況確認し、結果、その日のうちに家庭訪問を実施する運びとなった。

訪問した家庭は、無職の父と認知機能が低下した祖母との3人家族であった。家庭内の生活状況は極めて深刻で、ガスや電気が止められており、児童は風呂に入っておらず、食事もままならないということが、訪問で明らかになっていったが、このような状況について、学校側はそこまでの把握はできていなかった。

状況が明らかになった後は、学校と福祉が両輪となって対応を進めた。具体的には、父親への就労支援、認知症の祖母への支援、児童本人への登校支援及び学力面のサポートなどである。

本事例は、SSWの気づきと、教職経験相談員の協力によって課題解決に向け動き出したものである。学校のみでは対応が困難な場合があるが、福祉部門が所管する制度を活用することで、家庭の状況を把握し、複数の課題に対して並行して対応することができた事例である。

(4)取組事例2~義務教育終了後の支援に関する取組

進路決定に当たっては、中学校において3者懇談にて様々な実情・課題・本人の意思を考慮した最善の選択に向けた丁寧な協議が行われている。しかし、進路後に予測される不安への対処等については、本人や保護者への情報提供が必ずしも十分とは言えず、進学先で不登校となるケースもあった。

そうしたことから、「地域福祉の支援体制があること」「他にもつながれる場所があること」等を卒業前の保護者や生徒に対して適切に提供する場として、令和7年3月、5月、11月に、「中学校卒業後の学業や生活の不安等の相談はどうしたらいいの? 説明会&相談会」を教育・福祉連携拠点「らしっく」※で開催した。中学校時代に不登校となった経験者からのメッセージを披露した後、ひきこもり・就労支援を行う団体(NPO法人乙訓障害者事業協会「乙訓もも」)、不登校の児童生徒や保護者の居場所活動をしている団体(フェリーチェ)、中高生の不登校への巡回相談等を展開する府の組織(京都府脱ひきこもり支援センター)、長岡京市の福祉なんでも相談窓口等の担当者からの説明を行い、その後、個別相談に応じた。参加者には、中学生の保護者のほか、高校生の保護者も見られた。

教育・福祉連携拠点「らしっく」
「らしっく」は令和6年度に設置。長岡京市教育支援センターと施設を共有している。教育と福祉の連携を強化し、不登校やひきこもり状態にある児童・生徒への切れ目のない支援を実施。高校生も対象としており、学習支援等を行っている。「らしっく」は、とりこぼさない支援体制整備事業のひとつである。

4.長岡京市におけるその他の連携取組

(1)市庁舎集約による効率的な連携

長岡京市庁舎は、令和5年2月に、本庁舎と分庁舎に分かれていた旧庁舎から移転、新庁舎での業務がスタートした。

新庁舎は1つの建物に集約され、3階に地域福祉連携室(福祉なんでも相談室)を配置、同フロアには子育て支援課、健康づくり推進課、障がい福祉課、福祉政策室、生活支援課、こども家庭センター、ファミリーサポートセンターが、2階には高齢介護課、国民健康保険課、医療年金課などの健康福祉部署が、それぞれ配置された。2階で経済的困窮、年金、保険料未納といった相談を受ければ、3階の「福祉なんでも相談室」に速やかにつなげることも可能となった。見渡しのきくフロア構成となったことで、来庁者の姿が自然と目に入り、庁舎内の動線が短縮され、さまざまな問題を早期にキャッチできるようになった点は大きい。

どの部署をどのフロアに配置するかについては、庁舎の体制や庁舎建設時に、どのようにしたら連携がしやすくなるのか等の検討を重ね、現在のフロア構成につながっている。

また、令和8年1月より教育委員会も新庁舎に移転をし、教育と福祉の連携が進みやすい環境となった。

  • 7階 :学校教育課、教育総務課、教育長室 他
  • 3階 :子育て支援課、健康づくり推進課、障がい福祉課、福祉政策室、生活支援課、地域福祉連携室・福祉なんでも相談室、こども家庭センター、ファミリーサポートセンター
  • 2階 :高齢介護課、医療年金課、国民健康保険課、税務課
(2)特別な配慮を要する児童に対する連携体制

長岡京市においては、特別な配慮を要する児童に対して教育・福祉・健康・医療・障害分野の連携が進んでおり、良好な支援体制を築いてきている。例えば、教育支援委員会にこども家庭センターの保健師も参加し、学校長や特別支援学級担当等と緊密に連絡を取っている。また、市独自のリンク・ブック(こどもの成長・発達に関する記録を、本人や保護者又は相談窓口等の支援者等が記入できるようになっており、また、医療・福祉サービスなどの利用状況等もファイリングできるようになっている一冊にまとまった記録物)を保護者や本人が管理し、これを必要に応じて、本人に関わる教育・福祉・医療・障害分野の支援者や行政担当者等に見せることでその本人の情報を関係者間で共有することができ、円滑な連携に繋がっている。保護者や本人にとっても、複数機関の関係者に、状況を伝える際の負担軽減にもなっている。

5.大学との包括連携協定と教育・福祉の部局間連携

(1)大学との包括連携協定

長岡京市は令和6年4月に大阪大学大学院連合小児発達学研究科と包括連携協定を締結した。この協定は、健康や福祉の増進、文化・教育の振興、人材育成に関する協定であり、こどもの成長・発達への支援、不登校やひきこもり支援、就学前・就学後の子育て支援など、さまざまな支援を進めるに当たって両者が連携を深めることを目的としている。

全国的に不登校の児童生徒が増加傾向にあり、長岡京市でも同様の状況が見られる。厚生労働省の調査では、令和6年の小中高生の自殺者数が過去最多となったことが報告されている。こうした背景のもと、長岡京市ではこどもの心に寄り添う支援を重視し、教育部門と福祉部門が連携して発達支援を進めてきた。令和6年度には、元教員を「教育コーディネーター」として福祉部門に配置するなど、体制の強化を図っている。令和6年度からは、教育・福祉連携拠点「らしっく」を整備し、大阪大学大学院連合小児発達学研究科との連携のもと、より実践的な取組や調査研究を展開している。具体的には、こどもの目線の動きを測定して社会性の傾向を評価する「かおTV事業」や、教育・福祉関係職員を対象としたこどものこころの発達に関する研修が実施された。

さらに、令和7年度には、学校風土調査を実施するとともに、千葉大学が開発した「勇者の旅」プログラムを導入し、不安への対処力を育む予防教育を推進している。このプログラムは、長岡第三中学校の1年生全クラスにおいて5月から開始され、12月には全ステージ(10時間)が生徒の好評のもと終了した。2月に「勇者の旅プログラム実践報告研修会」を実施したところ、市内小中学校の校長、教頭、通級指導教室担当者、特別支援学級担任、養護教諭の他、京都府の指導主事の参加があった。

(2)教育と福祉の連携打合せ会議

包括連携協定は、とりこぼさない支援体制整備事業の一つであり、主管課は地域福祉連携室だが、教育と福祉が対等の立場で連携をし、こどもの発達支援に取り組むとともに地域課題の解決を目指す。その連携の場として、『教育と福祉の連携打合せ会儀』を設置した。

会議の開催は、2,3カ月に1回、運営は教育サイドと福祉サイドが交互に担当する。協議内容は、「事業」、「予算」、「運営」などについて。「事業」に関する協議としては、大学との共同事業の進行管理(職員研修、市民講座など)、学校風土の改善や予防的プログラムの導入、不登校・ひきこもり対応(「教育・福祉連携拠点『らしっく』」)、フリースクールとの連携強化、調査・研究協力の調整、市民・教職員向け研修の企画と実施について等である。「予算」については、教育と福祉が折半で行い、共同で事業を実施。主なメンバーは、教育サイドからは教育委員会の学校教育課長、総括指導主事、教育支援センター所長と指導主事。福祉サイドからは健康福祉部次長と地域福祉連携室くらし連携担当になる。重要案件の場合は、教育長や健康福祉部長が入ることもある。


参考となる自治体資料・ホームページ(アクセス日:令和8年2月27日)


健康福祉部 地域福祉連携室 くらし連携担当  <TEL 075-955-3177> 
掲載日:令和8年6月18日