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発達支援における自治体取組データベース ~家庭と教育と福祉がつながる事例集~(つながる実践DB)

はじめに

発達障害をはじめ、特別な支援や配慮を必要とするこどもの支援には、家庭と教育と福祉の連携が不可欠です。本データベース(つながる実践DB)では、このようなこどもへの支援を「発達支援」と位置づけ、各自治体における発達支援の取組を、教育分野と福祉分野の担当部署の皆さまが活用しやすい形で整理・掲載したものです。 自治体の種類や地域、各自治体が回答した特徴的な取組内容をもとに、必要な情報にスムーズにアクセスできるよう構成しています。構築経緯などの詳細は、「発達支援における自治体取組データベース~家庭と教育と福祉がつながる事例集~の経緯等について」(PDF:260KB)をご覧ください。

教員経験相談員を配置した発達支援センターの取組 / 校務支援システムを活用した個別の(教育)支援計画の情報共有について / 関係機関が集う連携協議会

自治体区分 市(人口10万人未満) 地方区分 近畿
取り組みの特徴を表すタグ #教員経験者 #校務支援システム #障害者自立支援協議会 #市町村の発達支援に特化した組織 #圏域の連携

取組に関する情報

自治体名 滋賀県 米原市
取組の概要  市発達支援センターでは、基本方針に教育・福祉の連携を初期段階より位置付け、教員経験者の相談員を開所時から教育と福祉の「橋渡し役」として配置している。
 教育委員会が管理する校務支援システムへのアクセス権限が、発達支援センター相談員にも付与され、学校コンサルテーション、ケース検討会議に参加の際には、事前に情報収集を行うことで、学校と福祉のやりとりが円滑になっている。
 圏域自立支援協議会専門部会で、部会メンバーの教員の発案で「発達しょうがい児・者に関する主な資源の一覧(湖北圏域)」を作成。圏域内の小中学校の先生に向け、教育委員会学校教育課(特別支援教育担当)と発達支援センター相談員(教員経験者)が一緒に全小中学校に出向き、資料の説明、配布。
取組の関係部署 健康福祉部 障がい福祉課(発達支援センター)
教育委員会 学校教育課(特別支援教育担当)

自治体に関する情報

自治体ホームページ

https://www.city.maibara.lg.jp/index.html

総人口と総人口に占めるこどもの比率

総人口 37,375人 総人口に占めるこども比率 16.99%
出典 総務省住民基本台帳R6.1.1

教育・福祉関連の地域資源情報

  小学校 中学校 高等学校 特別支援学校
公立 9校 6校  2校
私立
特別支援学級・通級の設置状況

特別支援学級の設置校:小学校9校、中学校6校

通級による指導: 小学校4校、中学校2校

  児童発達支援センター 児童発達支援事業所 放課後等デイサービス  放課後児童クラブ
市内 1施設(指定管理) 1施設 6施設 10施設
出典

米原市ホームページ(R8.6.22)

障害児通所支援受給者数 164名
出典 厚生労働省R6.3

教員経験相談員を配置した発達支援センターの取組

市発達支援センターの概要

米原市にお住まいの発達障がいのある方やその家族、また発達障がいに関わる支援者・関係機関への相談支援・発達支援・就労支援および啓発活動と研修等を関係機関と連携しながら行っています。

業務内容
  • 相談支援:専門スタッフが面談室にて相談に応じます。
  • 学校、園などへの訪問相談:必要に応じて学校、幼稚園、保育園などを訪問し、教師等への相談に応じます。
  • 参加支援事業
  • 啓発活動と研修:発達障がいに関する正しい理解や支援の方法を広めるために、研修会や勉強会へ職員派遣(*市出前講座「発達障がいってなぁに」*学校や職場での研修会)します。
  • 乳幼児等の保護者支援:「相談支援ファイル」の配布や、子育てについての研修などを行います。

(米原市HPより抜粋)

1.市発達支援センターについて<設立経過と変遷>

平成25年、米原市において発達支援センターが設立された。企画段階より、教育と福祉の連携が主要な課題として認識されており、教育と福祉双方をよく知る組織が必要との考えが市にあった。国の情報や他自治体の先行事例を参照する中でも同様の課題が確認されており、センターの基本方針として、「教育・福祉の連携」が明確に位置づけられた。

企画には教員及び教員経験者が参画し、開設時には所長及び相談員に教員経験者が配置された。所長は特別支援教育の専門家であり、県教育委員会において特別支援教育室長を務めた経歴を有し、発達支援センターの制度や運営に関する知見も豊富であり、特別支援教育への深い理解が評価された者である。早期に候補者として選定されており、当該候補者を中心に準備は進められた。なお、検討開始から設立に至るまでには3年を要した。所長については、初代所長のみが教員経験者で、それ以降は福祉部局の職員が兼務する形で置かれていたが、令和8年度には前年度まで相談員を務めていた教員経験者が学校教育課を兼務する形で所長に就任している(後述)。相談員については、異動等があっても継続的に、教員経験者が配置されている。相談員は、健康福祉部(福祉部局)から教育部局に候補者の人選を依頼した上で選任される。

歴代相談員(教員経験者)は、教育と福祉の「かけはし」的な役割を果たしている。他にその時々のニーズに応じて、就学後の療育OBやその保護者の交流機会、特別支援学級(自閉症・情緒障害)担当教員の交流機会、ニート・ひきこもりの人の交流機会の場を設けるなどの取組等を行ってきた。ただし、他の社会資源普及やニーズの変化により、これらの取組を継続する必要性が薄くなった場合には終了している。

2.職員体制

  • 所長 1名(令和7年度までは障がい福祉課課長が兼務。令和8年度は「相談員」が昇格・就任し学校教育課と兼務)
  • 心理士 3名
  • 「特別支援教育アドバイザー」(教員経験者) 1名(令和7年度までは相談員として配置)
  • 巡回支援専門員 1名 (療育経験のある保育士)
  • ことばの教室指導員 3名(言語聴覚士、小学校(通級指導教室)の教員経験者、特別支援学校の教員経験者)
  • 保育士 1名 (親子教室の運営補助)

3.相談員(教員経験者)の業務について

(1)相談業務
  1. ○学校訪問相談

    • 学校からの正式な依頼手続き(職員会議又は校内委員会を経て、管理職又は特別支援教育コーディネーターから依頼されるもの)に基づき、心理士とともに訪問、授業観察→コンサルテーション→(必要に応じ)ケース検討会議を行う。なお、緊急を要する場合や校長自身の学校運営に係る問題意識について相談したい場合など、上記手続きを経ずに、校長からの電話等による要請に基づいて訪問する場合もある。

    • こどもの学校での生活に不安や課題を感じている保護者から、「学校訪問してこどもの様子を確認してほしい」との依頼があった場合も対応している。その場合、相談員は、学校へ依頼の趣旨を伝える旨や学校と一緒になって課題解決に取り組む方針である旨を保護者にご理解いただいたうえで、学校訪問を実施している。

    • 事業所から依頼があった場合についても、必要に応じ学校訪問する考えではあるが、現時点では実績はない。

  2. ○その他の相談対応

    米原市では、重層的支援体制整備事業や若者支援等の事業を、社会福祉協議会等の事業者に委託しており、そういった事業者からの相談にも対応している。相談内容は、高校(通信制を含む)生活に困難を抱えている生徒への対応、大学を卒業した若者の地域へのつなぎ等の対応、当事者の発達課題のみならず複数の課題を抱えている家庭への対応、ひきこもりへの対応等に関する相談である。そのほか、個人からの相談にも幅広く対応している。

(2)発達支援センターが主催する会議・事業等の担当業務
  1. ○発達支援調整会議(部署横断的な発達支援に係る庁内調整会議)
  2. ○発達支援センター講演会(1回/年)副担当(広報、申込み集約、講師との連絡調整、課長口述、当日司会)
  3. ○学校教育課との調整業務
(3)他課への協力、参加(依頼、要請に応じて)
  1. 〇学校教育課:特別支援教育支援委員会委員、就学相談会相談員、個別の教育支援計画・指導計画検討会委員
  2. 〇こども保育課:特別支援保育支援委員会委員、特別支援保育研修会講師
  3. 〇子育て支援課:不登校引きこもり防止会議
  4. 〇その他:要保護児童対策地域協議会、重層的支援体制整備事業、相談支援包括化推進事業、ケース会議(子育て支援課、社会福祉課、社会福祉協議会、校園)、生活・学習支援(ほたるーむ)会議(子育て支援課、社会福祉課、社会福祉協議会他)、長浜米原しょうがい者自立支援協議会学齢期班

4.教員経験者を相談員とすることの意義、効果

教育現場では、教育課程や学習指導要領に基づいた特別支援教育の実施が求められており、そのため、必ずしも教育制度の背景等の理解が十分ではない福祉側からの要請については、そのすべてに応えることが困難な場合も少なくない。また、教育と福祉の間には、制度の違い、専門性や用語の違いが存在し、意思疎通を妨げる要因となっている。こうした状況から、教育と福祉の双方の視点を理解し、適切に通訳・調整できる人材の配置が重要であり、そのため、教員経験者の相談員が、そういった「通訳的役割」を果たし、連携体制の円滑化と支援の質の向上に努めているところである。

具体例として、保護者が、放課後等デイサービスとの話し合いにより決めたきめ細かなこどもへの配慮方法について、それと同じ内容の配慮を学校にも求めてくるケースが挙げられる。限られた人数とスペースだからこそ可能となる放課後等デイサービスでの配慮と全く同じ配慮を、数十人の児童を抱える通常級での教育活動の中で行うことは難しい場合もある。そのことを学校側から説明し、家庭と協力しながら対応可能な範囲でこどもを支援していきたいと申し出ても、合理的配慮を提供すべき立場である学校からの説明のみでは、なかなか保護者の理解を得られないといった状況が生じている。そのため、学校側が対応に悩み、相談員(教員経験者)へ助言を求めるといったケースである。

相談員は、家庭・福祉事業所・学校それぞれの話を丁寧に聞き取り、学校の先生とも情報を共有しながら、三者が協力して取り組める場づくりを進めている。学校からの要請であっても、保護者や福祉事業所からの要請であっても、第三者的な立場、中立的な立場を保ち、三者の意向をつなぐ「通訳的な役割」を果たしながら、家庭・教育・福祉が連携してこどもを支える仕組みづくりを目指している。

5.教育と福祉のさらなる連携強化に向けた体制作り

前述のような相談員(教員経験者)の活躍を踏まえ、さらなる連携強化のため、令和8年4月1日付で、当該相談員を所長に昇格、就任させ、その後任の相談員に、特別支援教育の経験を有する教員経験者を配置した。新所長は、相談員時代の業務も引き続き担い、これを後任者にも徐々に引き継ぐこととしている。

後任の相談員には、「特別支援教育アドバイザー」の肩書を与え、通級担当教員への指導・助言、児童生徒の心理検査、特別支援教育支援委員会委員や就学相談会相談員などの業務も担うことで、発達支援センター相談員としての学校への介入をより円滑に行えるよう配慮している。なお、学校教育課が実施する心理検査について、発達支援センターの心理士もこれに協力するなど、学校教育課と発達支援センターとの業務協力を進め、さらに、所長も、学校教育課に専用デスクを設けて一定時間執務することにより教員への助言・指導など学校への支援を充実させることとしており、このような新たな体制の構築により、教育と福祉の連携や学校に対する支援のさらなる強化・充実を目指す。

6.教員経験相談員のいる組織について

(1)心理士(福祉の立場)から見て

教員経験相談員の存在は、教育と福祉の専門領域をつなぐ「かけはし」としてたいへん重要である。心理士が学校コンサルテーションにおいて授業観察を行い、その後のケース会議で「こどもの特性の捉え方」や「望ましい関わり方」について助言を行う際、心理の専門性に基づく視点を率直に提示できるのは、教員経験相談員が同席していることによるところが大きい。

教員経験相談員は、教育現場の文化や実践の流れを熟知しているため、心理士の助言内容について「教育現場ではこの表現の方が伝わりやすい」「この提案は現場の運営上、実施が難しい可能性がある」といった調整をその場で行ってくれる。これにより、心理士は教育側の受け止め方を過度に気にすることなく、専門性に集中して発言することができる。

他地域では「福祉の人が教育現場に入りにくい」という声を耳にすることもある。背景には、教育と福祉の言語や文化の違い、役割の境界が曖昧になりやすいことなどがあると考えられる。しかし、発達支援センターでは歴代の相談員が教員経験を有しており、教育現場との信頼関係が継続的に築かれてきた。そのため、学校側も安心して相談でき、心理士としても教育現場に入りやすい環境が整っていると感じている。このように、教員経験相談員は、心理士の専門性を教育現場に適切に橋渡しする役割を担い、両者の協働を円滑にするうえで欠かせない存在となっている。

(2)相談員(教育の立場)から見て

教育と福祉の連携は、こどもへの支援をより効果的に行うために極めて重要である。我々は専門職として、学校現場におけるコンサルテーションに参加し、授業の様子を共に観察した上で、心理士が心理的観点から助言を行う。その内容を教育的立場から「指導としてはこのように展開してはどうか」と具体的に提案することで、支援が実践に結びつきやすくなる。さらに、こうした取組を保護者対応や学校全体の支援体制へと広げる際には、「この部分は全校的に共通化できるのではないか」「この方法は他の教室でも活用できるのではないか」といった視点で提案を行っている。このような場面には必ず管理職にも参加いただいており、元教員としての経験を活かしながら、教育現場との橋渡し役を果たしている。今後さらに双方が歩み寄ることで、より多くの支援をこどもたちに還元できると考えている。

校務支援システムを活用した個別の(教育)支援計画の情報共有について

米原市は小中学校教育振興事業の一つとして学校教育の中に、統合型校務支援システムの導入や学校間ネットワークの構築といったデジタル基盤を整備することで、教育の ICT 化を一層推進していくための体制整備を行った。その市内小中学校に配備されている校務支援システムは、学校内、公立学校と教育委員会を結ぶ役割を果たしている。この支援システムにおいて、相談員(教員経験者)は、発達支援センターの代表として、市内全ての小中学校にアクセスできる権限を有している。このシステムを活用することで、発達検査の結果など個人間のやり取りを行っても、外部に情報が漏れることはない。この仕組みにより、多くの情報を安全かつ効率的に共有できているため、有効に機能していると考える。個別の指導計画や個別の教育支援計画、支援会議などについても、必要に応じて対象のこどもに関する情報を共有することが可能であり、会議やコンサルテーションの前に確認し、学校と連携して対応している。

これまでも発達支援センターとして、校務支援システムにアクセスできるようにしてほしいとはたらきかけてきたが、教育と福祉の組織の壁により実現は容易ではなかった。しかし、議論を重ねていく中で、一定のアクセス制限を設けるとの条件のもと、校務支援システムにつながることができた。さらに、権限や責務の明確化、連携推進といった観点から検討を進め、発達支援センター所長を学校教育課兼務とし、これにより、校務支援システムや学校教育課専用フォルダに制限なくアクセスできるようになった。現在、校務支援システムにつながっている機関としては、米原市教育委員会学校教育課・教育総務課・学校給食課、市内小中学校15校である。

発達支援センターはかつて、健康づくり課(母子保健)に配置されていた時期がある。この時期から、母子保健、乳幼児健診、発達相談に係るデータの共有が図られており、障がい福祉課に所属が変わった後もこれが引き継がれ、保護者の同意のもと、母子保健のデータと相互に情報共有できている。

このように、校務支援システムを通じての学校における情報や母子保健を通じての乳幼児検診の情報等を共有できる体制を整えたことにより、一貫した全年齢対応のシステムは存在しないものの、必要に応じて情報共有・連携が可能となっている。

関係機関が集う連携協議会

米原市では、自立支援協議会は、「長浜米原しょうがい者自立支援協議会(図1 体制図)」として、長浜市と共同運用している。協議会の目的・役割として、「協議会は、この湖北地域(注:長浜市・米原市)に暮らしているしょうがいのある人たちが、住み慣れた環境で、また住みたい場所で、 いきいきと暮らし、共に育ち学び働き続けられることを目指し、しょうがいのある人たちとその家族、及び教育医療労働福祉その他携わる関係者が一緒になり課題を整理・協議して、解決していくものとする。そして、それを達成していくために、障害者権利条約や障害者基本法をベースとした、湖北地域全体で包括するような社会モデルのシステム・施策を立案し、推進していくこと」(長浜米原しょうがい者自立支援協議会 令和7年度活動報告より一部引用)が挙げられている。本協議会の事務局は基幹相談支援センター(湖北圏域設置)である。

<長浜米原しょうがい者自立支援協議会「R8年度の体制と協議事項」より一部引用>

(図1 長浜米原しょうがい者自立支援協議会体制図)

発達しょうがい者支援部会(専門部会)<現在、ライフステージ・専門性部会>で作成した「発達しょうがい児・者に関する主な資源の一覧(湖北圏域)」について

専門部会に参加しているある教員から「教員は県の中で市をまたぐ異動があるので、他市からやってくると、社会資源の仕組みや名前も違い、どこにどういった資源があって、どこに連絡したらよいのかが異動するたびにわからなくなってしまう」といった発言があったことから、異動してきた先生が簡単に情報を把握できる一覧表があると良いのではという話になった。部会で一覧表を作成し、長浜市と米原市で構成される湖北福祉圏域内の各学校に配布をした。

配布に当たっては、教員に周知していただくとともに、適切に活用いただくため、単に送付するのではなく、米原市発達支援センター相談員と教育委員会特別支援教育担当が各学校へ訪問をし、管理職に向けて説明を行い、今後不明点があった際には、発達支援センター相談員や教育委員会特別支援教育担当者へ連絡をくださるよう伝えた。

さらに、センター職員が、学校コンサルテーション、研修や会議などで教職員の方に会った際にも一覧表について、「職員会議などで情報を共有して教職員に広く伝わるよう」お願いするとともに、その際にも、不明点があった際には、発達支援センター相談員や教育委員会特別支援教育担当者へ連絡をくださるよう伝えている。一覧表(図2)はA3サイズの表裏2枚で、事業所やセンターごとに、具体的な相談内容、支援対象等の情報が整理されている。

(図2 発達しょうがい児・者等に関する主な資源一覧(湖北圏域))


参考となる自治体資料・ホームページ(アクセス日:令和8年6月22日)


米原市 健康福祉部 障がい福祉課(発達支援センター) <TEL 0749-53-5124>
掲載日:令和8年6月25日