Ⅰ.岐阜県トライアングル・プロジェクト
取組の経過
県の障害福祉課と特別支援教育課が主体となり、家庭・教育・福祉の連携を目的とした「岐阜県トライアングル・プロジェクト」に係る、実態調査及び検討委員会の、令和3年度から6年度までの取組を以下に示す。
表1 「岐阜県トライアングル・プロジェクト」に関連した実態調査
| 実施年度 |
対象 |
目的・内容 |
結果概要 |
| 令和3年度 |
県内市町村
障害福祉主管課
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県内市町村における教育と福祉の連携状況を紙面調査した。 |
紙面調査とヒアリングから、学校と障害福祉サービス事業所の情報共有が必ずしも十分に図られていないことが窺えた。 |
東濃圏域西部3市(以下「モデル3市」)の3事業所 |
上記についてヒアリングを実施した。 |
| 令和4年度 |
モデル3市の公立小中学校/放デイ事業所 |
市町村障害福祉主管課を対象に令和3年度に実施した調査結果を受け、現場レベルでの実態やニーズを把握するため紙面調査を行った。 |
「個別支援ファイル(サポートブック)」の認知度や連携の課題に関して、学校と放課後等デイサービス事業所とで、隔たりがみられることが窺えた。 |
| 令和5年度 |
東濃圏地域5市
障害福祉主管課
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「福祉関係機関は教育委員会との関係構築の場を設けているか」といった具体的な連携の実態について確認した。 |
「福祉関係機関と教育委員会との関係構築」や「学校・福祉現場間の連絡先共有」については、多くの自治体で取組が進んでいるが、「個別の教育支援計画の共有」や「サポートブックの作成」に関しては、十分に行われていない実態が窺えた。 |
| 令和6年度 |
県内市町村
障害福祉主管課
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岐阜県全体の発達障害者等支援体制の整備推進に向け、「発達障がい者等支援体制整備状況調査」を、各市町村の障害福祉主管課に実施した。 |
「教育と福祉の連携体制の整備状況」に関し、多くの自治体で体制整備が進んだことが窺えた。 |
(1)令和3年度
<県内市町村を対象にした教育と福祉の実態調査>
<モデル地域の選定経緯及びモデル3市の福祉事業所を対象にしたヒアリング>
令和2年度に「岐阜県発達障がい者等支援体制整備推進連携会議」の委員である児童精神科医より、「プロジェクト推進に向けモデル市町村を選定して実態把握することとしてはどうか」との助言を受けたことが発端であった。
選定に際し、①県障害福祉課担当者が、東濃圏域西部に位置する多治見市における教育・福祉の現場連携の実績を把握していた点、②令和3年8月の調査及び東濃圏域発達障がい支援センターや同圏域西部に所在する放課後等デイサービス事業所へのヒアリング結果から、東濃圏域西部は、学校と事業所間の連絡システム構築やサポートファイルの活用など、今後の情報連携体制確立に向けたさらなる取組が期待されると認められた点の2点に着目した。
上記により、東濃圏域西部地域の3市(土岐・多治見・瑞浪)に打診、了解を得て、これをモデル地域と定めた。
その後、モデル3市に所在する福祉事業所を対象に詳細なヒアリングを実施。
実態調査やヒアリングの結果を踏まえ、教育・福祉の連携が強化されることは、支援や対応の一貫性が保持され、障害がいのあるこどもにとってより適切な支援が提供されることに繋がると期待されることから、県障害福祉課としては、引き続き「岐阜県トライアングル・プロジェクト」を推進することとした。
(参考)圏域発達障がい支援センター
・岐阜県では、岐阜圏域を除く県内4圏域に「圏域発達障がい支援センター」を県の委託事業として設置し、各圏域の当事者や家族、関係機関からの相談業務を担っている。
・ 一方、「岐阜県発達障害者支援センター」は県が直接運営する支援拠点であり、岐阜圏域における発達障がい支援センターの役割に加え、県全体の発達障害者支援の中核的機能も担っている。
・ 岐阜県発達障害者支援センター及び各圏域発達障がい支援センター間の情報共有は、年2回の「県発達障害者・圏域発達障がい支援センター会議」を通じて行われている。
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(2)令和4年度
<モデル3市の公立小中学校と放課後等デイサービスを対象にした実態調査>
令和3年度に実施した調査結果を踏まえ、現場レベルでの連携の実態やニーズをより詳細に把握し、課題を明らかにすることを目的として、「岐阜県の家庭・教育・福祉の連携『トライアングル』プロジェクト調査」を実施した。本調査の調査項目は10項目で、県障害福祉課と特別支援教育課の協働により、県内3市に所在する公立小中学校45校及び放課後等デイサービス22事業所を対象として実施した。回答結果からは、「個別支援ファイル(サポートブック)(切れ目のない支援を目的に、こどもの情報を共有するため家庭が中心となり作成する資料)」の認知度や連携に対する課題認識において、学校・事業所間、あるいは職員間で温度差があることが窺えた。
<岐阜県トライアングル・プロジェクト検討会議①(モデル3市との意見交換)>
県障害福祉課は「岐阜県トライアングル・プロジェクト検討会議」として、モデル3市の福祉部局担当者等との意見交換を行った。県障害福祉課より、上記実態調査の結果報告を行った後、各市の担当者から意見を聴取した。
他の自治体の例を参考に、県が連携マニュアルの大枠を作成、各市で詳細を決め、作成を進めること、連携推進に資する研修を実施すること、また、学校と福祉事業所とが相互理解を深めることの重要性などについて意見が交わされた。
(3)令和5年度
<県内教育・福祉の行政担当者を対象とした相互連携研修>
令和4年度に実施した「岐阜県トライアングル・プロジェクト」調査及び検討会議の結果を踏まえ、同年8月、県障害福祉課と特別支援教育課の共催による「相互連携研修(障害がい児支援における家庭・教育・福祉の連携をテーマとした研修)」を実施した。この研修は、県内の市町村福祉部局担当者(障害児福祉担当・保健師等)や教育委員会担当者等を対象として開催され、計66名の参加があった。
研修時間は90分、オンライン形式で、外部講師によるトライアングル・プロジェクト報告に即した教育・福祉連携の重要性の解説や取組事例の紹介等の講義の後、ワークの時間が設けられた。ワークでは、参加者がそれぞれの現場で実践可能な連携策について検討、情報交換した。
研修の事後アンケートからは、「連携に当たり、ルール作りの大切さを改めて感じた」、「(福祉事業所側)児童の家庭との関係に意識が行きがちのため、学校との関係への意識が甘くなっていると感じた」、「(学校側)教員は異動が避けられないので、誰が担当になっても連携を進めていける環境づくりを具体化していきたい」などの感想が寄せられた。
<東濃圏域5市対象の調査と岐阜県トライアングル・プロジェクト検討会議②>
東濃圏域5市の障害福祉主管課を対象に、教育と福祉の連携の実態調査を実施、福祉関係部署と教育委員会との関係構築や、学校と福祉事業所との関係構築は、ある程度進んでいることが確認された一方で、「個別の教育支援計画の共有」や各市町村が作成している「サポートブック」の学校現場での活用が必ずしも十分になされていない実態も明らかになった。
県障害福祉課においては、「トライアングル・プロジェクト検討会議」を開催、東濃圏域5市の教育委員会、福祉部局各担当と、東濃圏域に所在する障害児通所事業所(3事業所3名)が参加し、調査結果の共有、意見交換が行われた。障害児通所事業所の参加者からは、教員の対応の個人差や、学校間の温度差が大きいことが指摘された。連携にあたっては双方の歩み寄りが不可欠であるとの意見や、支援者個人の捉え方に左右されない、一貫した支援体制の整備が必要との意見が出された。
(4)令和6年度
<特別支援教育連携協議会への周知>
県障害福祉課は、学校現場との連携推進を図るため、県内6カ所(5圏域および岐阜市)で開催された「特別支援教育連携協議会」(障害がいのあるこどもの指導・支援にかかわる教育,福祉,医療,労働等の関係部局の連携協力を円滑にするための会議)へ参加した。協議会において、同課は令和6年4月に発出された国通知「地域における教育と福祉の一層の連携等の促進について」を紹介し、教育と福祉の連携の必要性を訴えた。
<県内市町村を対象とした「発達障がい者等支援体制整備状況調査」>
岐阜県全体の発達障害がい者等支援体制の整備推進に向け、各市町村の障害福祉主管課を対象に「発達障がい者等支援体制整備状況調査」を実施した。本調査は4つのテーマで構成されており、そのうち「教育と福祉の連携体制の整備状況」に関する設問では、「整備されている(24%)」「ある程度整備されている(52%)」との回答が合計で7割を超えた。
令和3年度調査における類似項目(「教育・福祉現場が連絡を取る方法や手段を明確にしているか」)への回答が5割に満たなかったことと比較すると、設問は異なるものの、令和3年度と比較して、多くの自治体において体制整備が進んできたことが窺えた。
自由記述からは、近年の傾向として、自立支援協議会に新設された「こども支援部会」の活用や、既存会議への他分野参加の促進など、資源を効率的に活用した連携が進展していることが窺える。また、研修を通じた関係構築や認識の共有、連絡窓口の明確化など、支援者が交代しても継続的に連携が図られる仕組みづくりがなされていることも窺えた。これらの調査結果は「岐阜県発達障がい者等支援体制整備推進連携会議」を通じて県内関係部局へ周知された。
<今後の取組>
県においては、障害福祉課と特別支援教育課を中心に、「第4期岐阜県障がい者総合支援プラン(令和6年度〜令和8年度)」の「分野別施策」に盛り込まれている「今後の取組」を推進することとしている。具体的には、「県発達障害者支援センター及び各圏域発達障がい支援センターにおいて、市町村、保育所、学校、障害福祉サービス事業所等に対する研修、連絡調整、助言等を行い地域の支援体制の強化を図る」、「適切な対応を行える地域の支援者を養成するため各種研修の充実を図る」、「『個別支援ファイル(サポートブック)』の作成・活用を促進し、教育と福祉の連携及びライフステージを通じた切れ目のない支援体制の構築を図る」などである。
図 令和7年度「岐阜県発達障がい者等支援体制整備推進連携会議」障害福祉課作成資料より
岐阜県発達障害者支援センターでは、研修会の企画や普及啓発、関係機関との連携を通じた地域支援体制の充実を図っているが、本稿では「研修機能」に焦点を当てて取り上げる。
直轄の強みを活かし、「学校における支援力向上事業」として、県障害福祉課や県教育委員会と連携し、教員を対象とした研修を企画・実施している。 また、令和5年度から研修内容の体系化を図り、当事者、家族、支援者等が広く参加できる「ベーシック研修」から、発達障害がい支援に携わる新任者を対象とした「スタート研修」、支援者を対象としたより高度な「ステップアップ研修」まで、段階的な研修を提供している。
各圏域にある発達障がい支援センターも、関係機関へ向けた研修を実施している。
<ベーシック研修>(様々な立場の方を対象)
岐阜県内在住の発達障がいの当事者、家族、支援者等様々な立場の方が広く視聴できる。登録を行うことで、基礎的な内容の動画コンテンツを自由に視聴できる。令和7年度は10コンテンツの視聴が可能。
<スタート研修>(新任支援者対象)
県内の発達障害がい児者の支援(福祉・行政・教育機関等)に従事する新任支援者(概ね従事歴1年から2年目)の方を対象に学びの場を提供している。令和7年度は集合で3回実施した。研修テーマは「発達障害の基礎講義・就労について」、「教育について」、「就労・生活の場について」であった。
<ステップアップ研修>(支援者を対象にした、より高度な研修)
発達障害がいに係る支援者を対象に、より専門的な支援技術や問題行動の予防・対応等、実践的な内容を提供する。令和7年度はポジティブ行動支援と感覚プロファイルに関する研修を計画している。
<学校における支援力向上事業>(学校教員を対象にした研修)
発達障害がい児が学齢期に入ると、二次障害(精神不安定・暴言暴力・不登校・ひきこもり等)を引き起こすことも多い。学齢期の発達障害がい児の支援や対応に資する教員への研修は、上記3研修に加え、学校現場に即した実践的な内容が必要となる。
その前提として、児童生徒の現状やそれに対する教職員の支援の状況、校内支援体制、それらを踏まえた課題や今後の方向性を的確に把握する必要がある。
そのため、教育現場の調査を進めて実態の把握に努め、現場のニーズに即した実践的な研修を企画・実施しており、これにより、教職員や学校組織の対応力の向上を図っている。令和6年度実績では、13回、496名の教職員を対象に研修を実施した。
Ⅲ.教育と福祉の連携に関する県内自治体の取組
岐阜県より、教育と福祉の連携に関する取組を行っている自治体の中から、土岐市および可児市の取組が紹介され、本データベースに両市の取組も掲載している。
参考となる自治体資料・HP(アクセス日:令和7年11月6日)
担当部局:岐阜県 障害福祉課 発達障害支援係<TEL:058-272-8314>
掲載日:令和8年3月31日