職場実習
職場実習は、目的に応じて「準備訓練としての職場実習」と「就職のための職場実習」の2種類に分けられます。
準備訓練としての職場実習
実際に企業内の作業に取り組むことを通して観察・評価を行う実際的なアセスメント方法です。
この方法は、環境要因の影響も含めたアセスメントができること、実体験を通して実習者自身で職業に関する現実的な検討ができること、企業から直接的な評価が得られること、職務再設計などの検討も併せて行うことができるなどの長所があり、広く活用されています。
<職場実習実施前の準備と押さえてほしいポイント>
①企業への職場実習に関する事前説明と承諾
・職場実習の目的、協力してほしいことなどを共有する
・職場実習中の事故、けが、体調不良など、トラブル発生時の対応方法を共有する
②企業とのスケジュール、作業内容や作業環境などの調整
・業務内容や環境を把握するため、事前に支援員が職場体験するのが望ましい
・実習後は必ず振り返りの機会を設ける
・企業の視点から評価を受ける機会を設ける
③職場実習評価表を事前に作成しておく
・支援員、企業、実習者の三者で評価ポイントを共有する
・職場実習のオリエンテーションで実習の目的や評価ポイント、職場のルール、危険箇所や禁止事項、準備品などを周知する
実習者によっては「実習先が自分の希望職種と異なる」などの理由から、職場実習に対して積極的になれないケースもあります。準備訓練としての職場実習の目的、職場実習を通して得られる効果などを事前に説明し、職場実習に向けた動機づけが大切です。
<職場実習の目的や得られる効果(例)>
- 将来の「企業で働く」ことを見越した実践的な訓練であること
- 企業の視点からの評価を得られる機会であること
- 企業で働く上で必要なスキルを経験を通して学ぶ機会であること
- 新たな仕事に対する可能性が広がること など
就職を目指すための職場実習
就職に対するイメージが固まってきた段階で、実習者一人ひとりの希望や実態に即して個別に実施します。
職場実習に必要となる受け入れ先企業の開拓は、ハローワークや障害者就業・生活支援センターと連携して行うことのほか、求人広告などから探すなどいろいろな方法があります。職場実習先がみつかった場合、事前に支援員が職場体験をし、職場のアセスメントをすることが望ましいでしょう。
障害者雇用の経験が少ない企業や発達障害のある人と接したことが少ない場合は、職場のアセスメントだけでなく、企業に就労移行支援事業所の役割や発達障害の特性などを伝えていくことが、キーパーソンの把握とナチュラルサポートのきっかけづくりに大いに役立ちます。
<ハローワークとの連携>
就職を目指す職場実習にハローワークとの連携は欠かせません。職場実習が、順調に進めば採用の可能性があり、その際は職業紹介をはじめ、障害者雇用に関わる助成金などの手続きなど、ハローワークとのやり取りが必要になります。
もし、ハローワークへの事前の連絡や情報交換などを怠ったまま職場実習を実施した場合、すでに雇用関係が成立していたと判断されてしまうことがあります。いわゆる、雇用予約や事前雇用にあたるもので、これに該当することになれば、一定の要件を満たすことで受給できるはずの障害者雇用に関わる助成金を受けられなくなる場合もあります。
そのため、職場実習の実施にはハローワークとの緊密な連携と情報交換が必要であることを十分に理解しておきましょう。
(参考)都道府県単独での障害者の雇用機会の促進に向けた事業
地域の実情にあわせ、障害者の雇用促進に向けて「職場適応訓練事業」や「職場実習推進事業」など、地方公共団体独自の事業を実施しています。事業の内容や呼称は地方公共団体ごとに異なりますので、都道府県や市区町村のホームページなどで確認してみてください。
平成26年度の都道府県・政令指定都市の単独事業の実施状況について内閣府が調査を行い、データベースを構築しています。
職場適応訓練や職場実習促進事業などで障害のある実習者の受け入れ経験がある事業所や、保健所が実施していた社会適応訓練事業の協力事業所(職親会など)は、受け入れ経験が豊富なため職場実習先として有力候補となります。
ハローワークとの連携に加え、このような地域のさまざまなネットワークを駆使すると、効率よく職場実習先の開拓ができます。
関連する資料
- 令和2年度版 就業支援ハンドブック 第1章 第2節「職場実習」(19~23ページ)(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター)
- 職業訓練実践マニュアル 発達障害者編Ⅲ ~企業との協力による職業訓練等~(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター)
- 就労移行支援事業所のための発達障害のある人の就労支援マニュアル(厚生労働省)