就職に向けた準備を始める
さまざまな働き方について
ご本人やご家族から「私には(うちの子には)どんな働き方が向いているでしょうか?」という問い合わせをいただくことがよくあります。能力や性格、価値観などは、一人ひとり違うので正解は一つではありませんが、「自分らしく働けること」や「安定して続けられそうな働き方」「できることを生かせる働き方」を選択することが大切だと思います。
一般就労と福祉的就労
「一般就労」と「福祉的就労」ということばは、あまり一般的ではなく、明確な定義もありません。企業や公的機関などに就職して、労働契約を結んで働く、いわゆる一般的な就業形態を「福祉的就労」と区別するために「一般就労」と呼んでいます。
一方、障害があり、一般の企業などでの雇用が難しい場合に、福祉施策のもとで就労の場の提供を受けて働く場合を総称して「福祉的就労」と呼びます。
福祉的就労では、障害者総合支援法に基づく就労継続支援A型やB型事業所などと利用契約を結びます。福祉事業所は、働く場を提供するとともに、一人ひとりの状況に合わせて、働くために必要な知識や能力向上のための支援を提供します。たとえば、「以前は就職していたけれど、離職後ブランクが長く、いきなり会社で働くには心身ともに不安が大きい方」「離転職を繰り返していて、スキルアップ後に就職をしたい方」などは、福祉的な支援のもとでじっくりと就職を目指すのもよいかもしれません。
<就労継続支援A型(雇用型)と就労継続支援B型(非雇用型の違い)>
雇用契約 |
報酬 |
対象者 |
平均報酬 (令和元年) |
|
就労継続支援A型 |
あり |
賃金が支払われる | 企業などに就労することが困難な方であって、雇用契約に基づき、継続的に就労することが可能な65歳未満の方(利用開始時65歳未満の方) |
平均月額賃金 78,975 円 |
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就労継続支援B型 |
なし |
工賃が支払われる | 就労移行支援事業などを利用したが一般企業などの雇用に結びつかない方や、一定年齢に達している方などであって、就労の機会などを通じ、生産活動にかかる知識および能力の向上や維持が期待される方 |
平均月額工賃 16,369円 |
令和元年度工賃(賃金)の実績について(厚生労働省)
福祉的就労を希望される方は、福祉サービス利用の手続きが必要になります。お住まいの市区町村の障害者福祉担当窓口までお問い合わせください。
一般就労を希望される方は、さまざまな支援制度を利用することができます。詳しくは、お近くのハローワークまでお問い合わせください。また、すでに発達障害者支援センターや障害者就業・生活支援センター、相談支援事業所などをご利用の方は、まずはそちらにご相談ください。
障害者雇用と一般雇用
求人には、障害のある方の雇用を前提に企業が勤務内容や諸条件などを検討して作成した障害者求人と、そうではないもの、いわゆる一般求人があります。
障害者求人へ応募する場合は、障害者手帳の所持や精神疾患、発達障害、難病など、医師の診断により働く上で困難さを抱えていることが前提です。また、企業や職場の方から適切な配慮を受けるために障害の種別、程度や内容などを伝える、いわゆる障害開示が前提となります。採用面接時や雇用後の職場環境、勤務条件などの配慮が適切に行われるようにするために必要な情報です。もう一つの側面として、障害者求人の背景には、企業の社会的責任として障害のある方を雇用したい、法定雇用率を満たしたいという企業心理も働いています。障害者雇用率の詳しい情報はここでは省きますが、雇用率の計算で算定対象となる方は、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳の所有者です。
障害者求人は、応募対象者を障害者に限定した特殊な採用形態であることから、一般求人に比べて求人数が少なく、必ずしもすべての求職者の希望にそったものではないなど、一般求人に比べ選択の幅が狭いのが現状です。
一方、一般求人の場合は、障害の有無は応募要件ではありません。障害のある方が応募することもできます。障害の開示、非開示については求職者の意思によります。また、一般求人、とくに障害非開示での就職の場合は、障害者トライアル雇用制度や職場に出向いてのジョブコーチ支援など、企業、ご本人への直接的な援助の提供が難しくなります。
- ハローワーク インターネットサービス-求人検索(厚生労働省)
※障害者求人は、求人区分で「障害のある方のための求人」にチェックを入れて検索してください。
【参考】関連する調査研究
下のグラフは独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センターが実施した、公共職業安定所の専門援助部門の紹介により就職した障害者(身体障害者・知的障害者・精神障害者・発達障害者)の職場定着に関連する要因などの調査報告書「障害者の就業状況等に関する調査研究」からの引用です。
一般求人かつ障害非開示での就職者に比べて、障害者求人で就職した方の就職後1年経過時の職場定着率は、2倍以上高いことがわかります。
また、一般的に発達障害のある方は職場定着率が低いという意見を耳にしますが、決してそうではないことも併せてお伝えします。
- 障害者の就業状況等に関する調査研究(独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構障害者職業総合センター)