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医療・保健

医療受診の意義と診断までの流れについて

発達障害の診断は、医療機関で行います。ここでは、医療機関を受診することの意義と、初診(初めての受診)から診断説明までの一般的な流れをお示しします。ただし、受診される方の状況や医療機関により、実施される内容は異なります。

受診および評価・診断の意義
医療機関を受診し、評価や診断を受けることの意義は、主に、①ご本人・ご家族や支援者が困難の背景にある発達障害の特性や併存する状態・疾患を知り、得られた情報を支援に活かすため、②公的な福祉サービスを受けるため、の2つです。その他に、遺伝性疾患などの症状の一つとして発達障害特性がみられる場合にその原因(染色体や遺伝子など)を探るため、ということもあります。

事前準備
多くの医療機関は予約制です。問診票やかかりつけ医等からの紹介状を持参するほか、支援機関等からの情報提供や、母子手帳、通知表や作文・ノート等の持参を依頼されることもあります。また、支援者が「これは医療機関に伝えておいた方がよい」と考える事柄がある場合には、ご本人・ご家族の了承のもとで必要な内容を準備します。あわせて、過去の検査結果や個別支援計画など支援機関で作成した書類があれば、添付しましょう。

受診する診療科
幼児期から学童期・思春期までは、主に小児科・小児神経科、児童精神科が担当します。義務教育修了から成人するまでは、児童精神科のほか精神科・心療内科もありますが、医療機関により対象とする年齢や状態像は異なるため確認が必要です。青年期以降は、精神科・心療内科が主に担当します。なお、児童精神科・精神科では、ご家族だけではなくご本人が受診を了承していることが必要です。

初 診
診察開始前に、身長・体重や血圧・脈拍を計測したり、心理士や福祉士が先に大まかな話を聞いたり(インテーク)する場合があります。
主に医師が、「今、何を心配している/困っている/悩んでいるか・何を相談したいか(主訴)」「いつからどのようなことがあったか(受診の経緯)」についてご本人、ご家族に問診します。

  • 主訴と経緯
  • 生育歴
  • 既往歴
  • 家族構成と家族歴
  • 現在の生活状況
  • 社会参加の状況
  • 福祉サービスや制度、支援機関の利用の有無

などが聴取されます。あわせて、診察時の様子を含めた行動観察も行います。
ご本人・ご家族が上記の内容を整理して話すことが難しいと予測される場合には、事前に支援者が情報の収集・整理をサポートできるとよいでしょう。

評価(アセスメント)
心配している・相談したい事柄の背景として、ご本人がどのような発達特性を持っているか、どのように環境との不調和を呈しているか等を多角的に調べます。発達障害の特性は、社会性、注意や行動のコントロール、読み書きや算数などの学習、感覚面、運動面など多岐にわたっていますが、複数の領域にまたがって特性や困難を有していることが多いため、いくつかの検査を組み合わせ(検査バッテリー)、ご本人とご家族、園や学校等の第三者からの情報を集め、包括的に評価します。

  • 発達歴の聴取
  • 園や学校、職場、支援機関等の第三者情報
  • 発達検査/知能検査
  • 各種心理検査
  • 身体医学的検査

などを実施します。1回に1~2時間程度を要し、複数回にまたがることもあります。
なお、診断には生育歴・社会適応の評価と行動観察が重要で、知能検査が発達障害特性を診断する決め手になるわけではありません。

評価結果説明と診断
結果説明・診断までの時間経過は医療機関によって異なり、多くの場合は一定の期間を要します。ご本人が持つ発達障害特性の詳細と、その特性がどのように育てにくさや生きづらさに繋がっているかが説明されます。また、困難だけでなく、特性の「強み」を理解することも大切です。ご本人の特性や状態像を知ることにより、周囲の理解と対応、より適した環境設定や支援方法を考えていきます。特性を踏まえた心理社会的支援が重要ですが、状態像・併存症により薬物療法も検討されます。
診断を受けることによって、年齢に応じた自己理解につながることが望まれます。