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就労支援の技法

システマティック・インストラクション

ジョブコーチによる支援では、原則、正・副の2名のジョブコーチと統括役の職業カウンセラーの3名で支援チームを構成します。これは単身で企業に出向き支援を提供することが多いジョブコーチが、個人的な考えや価値観におちいらぬよう、客観性を担保するためです。

ジョブコーチがそれぞれのことばや方法、態度で支援を提供したら、どうなるでしょうか?

支援対象者や一緒に働く従業員の方々は混乱するでしょうし、問題解決をはかるための支援チームとして機能しません。このような支援の揺らぎを小さくするためには、共通の尺度、ことば、基本ルールが必要です。これはジョブコーチに限らず、複数の支援者で支援チームを構成する場合にも同様のことがいえます。

システマティック・インストラクションとは、”課題分析”による作業工程や使用する道具の呼び方などの共有と、”指示の4階層”、”最小限の介入”、”距離(立ち位置)”、”賞賛や修正の仕方”など、支援を行う上での基本的ルールを意識し、系統的にわかりやすく伝えること、支援の標準化のための技術です。

システマティック・インストラクションの5つの基本的ルール

1.課題分析…動作や作業の手順と小さな行動単位に分けて、時系列にそって並べたり、仕事内容を具体化したり、工程を細分化すること。
2.指示の4階層…言語指示(直接言語指示、間接言語指示)、ジェスチャ-、見本の提示、手添えを用いる。言語指示が自立度は高く、手添えは低い。
3.最小限の介入…課題分析に基づき、必要最小限な指示を用いて、自立に導くようにする。自立への導き方は、障害特性やレディネス等を踏まえ、エラーレスラーニング、トライアンドエラーを検討する。
4.距離…相手の習熟度にあわせて、支持者は段階的に相手から距離を離し、フェーディングする。
5.賞賛、修正の仕方…相手への賞賛、修正は即時に行う。また、制止や修正を行う場合、声や表情はできる限り抑え、静かに止めるなど、負の強化の使い方には留意が必要。

指示の4階層

手添え、見本の提示(モデリング)、ジェスチャー(指さし)、言語指示(声かけ)の4つの指示方法を意図的に使い分け、できるかぎり介入度が低い指示方法で自立に至るよう導きます。介入度は「手添え」が最も高く、「言語指示」が最も低い指示方法です。

指示の4階層を図式化したもの。自立度は、手添え、見本の提示(モデリング)、ジェスチャー、言語指示の順で高くなり、介入度は手添え、見本の提示(モデリング)、ジェスチャー、言語指示の順で低くなることを示している。

最小限度の介入

作業者が自立的に作業、仕事ができる最低限度の指示方法を探る方法には、低い介入度の指示方法から徐々に高い介入度の方法に上げていく方法(トライアンドエラー)と、逆に高い介入度から徐々に下げていく方法(エラーレス・ラーニングがあります。

エラーレスラーニングとトライアンドエラーを図式化したもの。エラーレスラーニングは介入度の高い手添えから始め、介入度の低いモデリング、ジェスチャー、言語指示と介入度を下げていく中で、最低限度の指示方法を探る方法です。トライアンドエラーは、介入度が低い言語指示から始め、徐々に介入度を上げていく中で、最低限度の指示方法を探る方法です。

どちらの方法が適しているかは、障害のある方の特性や仕事の内容によりますが、最小限度の手がかり(言語指示)から試行しつつ、介入度を徐々に上げていくトライアンドエラーは、試した方法から正しい方法を判断して思い出すことが困難であるケースが多いため、採用する場合は注意が必要です。

とくに記憶障害や自閉スペクトラム症のある方の場合、初めに正しい方法を手がかりとして与え、徐々に介入度を下げていくエラーレス・ラーニングをおすすめします。

作業指示をする際の相手との距離

◆基本的なポジショニング 

  • 相手の真正面は避ける
  • 相手の利き手の横に立つ

◆距離のフェーディング

下の1の位置から段階的に3の位置に移っていく

  1. 互いの表情が見え、視線を合わせられる距離
  2. 相手の視界から外れているが、近くにいることがわかる位置
  3. 相手の視界から外れ、存在がわからない位置

賞賛、修正の仕方

  • 作業指示どおり、適切にできたら正しくできていることを即時に伝える
  • 賞賛の仕方は、正しいことが伝わればシンプルでよい
  • 作業手順を誤った場合、すぐに制止し適切な方法を伝える
  • 誤学習防止のため、必要な介入と修正を行い、最後は正しい結果で終える(中途半端な結果で終えると、支援対象者は何が正しい答えかわからなくなるため)

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