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発達障害がある人の就労の現状

就労支援ニーズと多様な進路選択

発達障害者の就労支援ニーズ

ハローワーク、障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなど、さまざまな支援機関において発達障害のある方の就労相談が増えています。発達障害のある方の就労支援の特徴として、本人の障害像や支援ニーズが非常に多様な場合があります。

たとえば、知的障害をともなう自閉スペクトラム症の方で幼少期から特別支援学校などの支援を受けてきた方と、大学を卒業後に企業での職業経験を経た後、職場内での異動や役割変更などにより「生きにくさ」が顕著となり、うつ病などの精神疾患を発症したことをきっかけに病院を受診し、発達障害の診断を受けた方では、支援の方策は大きく異なります。

診断を受けた時期、成育歴、教育歴、職歴など、対象者がどのような経過をたどって今日に至っているか、本人自身が持つ自己像はどのようなものか、これまでの失敗経験などからどのような心理的ダメージを追っているかなどの情報をつなぎ合わせて、目の前の本人に対して総合的に支援方策を検討することが大切です。

多様な進路選択

発達障害の特徴として、本人にとっての気づきにくさ、周囲からのわかりにくさがあります。たとえば、幼少期では周囲は「変わった子」と認識しつつも、本人は個性の範囲と認識し大学や専門学校などへ進学し、就職活動や資格取得の際の面接や実習での対人関係の難しさでつまずき、発達障害の診断に至ったなどのケースが多くみられます。このようなケースで「障害者雇用での就労を検討してはどうか」と伝えた場合、「周囲との違いに気づき」「診断を受け」「支援の必要性の理解、障害受容」「手帳を取得する」というステップを踏むこととなりますが、これまでの自身の歩みや将来に抱いていた夢との葛藤、そして新たな生き方を選択し一歩を踏み出す苦悩は想像を超えるものがあります。

「一般就労と福祉的就労のいずれを選ぶか」「障害者求人か一般求人のいずれを選ぶか」「障害を開示するか否か」「障害を誰に、どこまで開示するのか」「どのような配慮が必要か」などの一つひとつの選択と決定は、本人自身の将来にわたる生き方、働き方を選択する作業です。

就労支援は、本人が今後の人生を決めていくプロセスを、専門家としてさまざまな可能性や生じるであろうリスクなどを提示し、本人自身が将来に対する見通しがもてるよう、ともに考え支えていくことにほかなりません。

関連する資料

ここで発達障害のある方の就労支援に関する調査研究から作成されたマニュアルを紹介します。ぜひ、ご活用ください。

「発達障害者の就労相談ハンドブック」は、厚生労働省 平成20年度障害者保健福祉推進事業「発達障害者の就労相談マニュアルの開発及びその活用に関する研修事業」NPO法人ジョブコーチ・ネットワークによる成果物です。支援ニーズを整理する上で押さえておくべきポイントや相談場面での心構えなどが、わかりやすくまとめられています。

「就労移行支援事業所のための発達障害のある人の就労支援マニュアル」は、厚生労働省 平成24年度障害者総合福祉推進事業「就労移行支援事業所における発達障害者の効果的な支援プログラム構築のための調査について」社会福祉法人 横浜やまびこの里による成果物です。第1章で発達障害のある方の就労上の困難さや、発達障害のある方が職場で表出しやすい問題について、わかりやすくまとめられています。